試合レポート

山梨学院vs白鷗大足利

2021.11.02

山梨学院vs白鷗大足利 | 高校野球ドットコムこの試合のプレー写真は、記事の最終ページの下部に表示されています

山梨学院エース榎谷、縦振りフォームのカットボールで翻弄

山梨学院vs白鷗大足利 | 高校野球ドットコム
山梨学院先発・榎谷 礼央

 勝てば来春の選抜へ大きく前進する関東大会準々決勝。タレントが揃う山梨学院と、強打と走力で攻め立てる白鴎大足利が対戦することとなったが、注目は山梨学院の先発、榎谷 礼央だった。

 最速143キロを計測するストレートを武器に、初戦の拓大紅陵戦で勝利。一気に注目投手へ名乗り出た好投手が、白鴎大足利戦でも先発した。チームの打線が強力である以上、榎谷の出来次第で試合展開も変わると思われたが、その通りの結果となった。

 榎谷は3回までランナーを1人も出さずに序盤を終えた。5対0の4回、途中出場・佐藤吏功の三塁打で初めてランナーを出してピンチを招いたが、3番・阿部快俐、続く4番・齋藤 祥汰を変化球で内野ゴロに斬って取る巧みな投球でピンチを切り抜けた。

 グラウンド整備明けの6回、8対0の場面では二死一、二塁とピンチを作ったが、ここも変化球で空振り三振。勝負どころでは変化球が冴えわたり、白鴎大足利に反撃させない。

 その後、6回に山梨学院4番・高橋海翔の一打で9対0。コールド勝ちでベスト4に進出し、来春の選抜へ大きく前進した。

 2戦連続でのコールド勝ちで選抜への出場権を大きく近づけた山梨学院白鴎大足利相手に見せた9安打9得点の強力打線は吉田監督も太鼓判を押すミート力を活かした、繋がりのある打線だった。

 先制タイムリーを放った6番・澁谷剛生や、2本の長打を放った4番・高橋だけでなく、ノーヒットに終わった3番・岩田悠聖も、仕掛けをシンプルにして余計な反動を使わずに、鋭いスイングでボールに対して強くコンタクトが出来ているのが、印象的だった。

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 その打線を引き出したのは、白鴎大足利の初回の攻撃を三者凡退に抑えるなど終始好投を見せたエース・榎谷の快投だろう。

 7回を被安打5本、奪三振6、そして与四死球なし。最速143キロに注目しがちだが、制球力の高さも持ち合わせていることを証明した。

 この結果の裏側には、130キロ前半を計測するカットボールが功を奏した。白鴎大足利の各打者に対して、カットボールを使ってゴロを打たせた。低めに決まれば空振りを奪えた。ストレートに対して球速差5~10キロしかないため、対戦する各打者にとっては違いを感じにくく、打たされたという感覚があったのではないだろうか。

 元々、榎谷の持ち球の1つではあったが、縦振りのフォームへ改善できたことで、カットボールも改善されたという。

「前のカットボールは、ストレートに近い感覚で投げることで、少し横に曲がっていましたが、金属バットなので芯を外しきれていませんでした。しかし、縦振りに身体を使えるようになったことで、縦にボールを切るように投げる感覚が出てきて、変化量を多くすることができました」

 今大会前、山梨学院・吉田監督は、長崎・清峰監督時代にコンビを組んでいた大崎・清水監督のところへ部長を送り、ピッチャー指導のノウハウを吸収させたという。それで榎谷のフォームが改善されて、ボールの質も改善された。それは吉田監督の目にも、「スピードが140キロを超えるようになり、見違えるように成長した」とすぐわかるほど改善ぶりだった。

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白鴎大足利先発・齋藤 祥汰

 確かに、この試合でもストレートの速さは光った。しかし、それ以上に榎谷を支えたのは、副産物である変化球だった。2019年の秋季関東大会ではあと一歩で優勝を逃した。今度こそ頂点を掴むことが出来るか。準決勝の相手は浦和学院だ。

 榎谷の前に5安打を放つものの、ホームが遠かった白鴎大足利。強打を封じられ、なかなかチャンスらしいチャンスを作らせてもらえず、塁上からプレッシャーをかけられなかった。ただ、7回に6番・谷澤勝斗から連打が出るなど、中盤以降には榎谷を捉え出していた。

 特に谷澤は、どっしりとした体格でボールを呼び込むと、軸で鋭く回転して、ボールをはじき返していた。初戦・藤代戦で活躍した中島空大などを中心に、一回り強力な打線を作れるか。

 また投手陣では、エース・齋藤が落差の大きいスライダー系のボールを存分に生かす角度を付けた投球で山梨学院打線に挑んだ。しかし、立ち上がりから低めに外れるボールを見切られ、カウントが苦しくなったところで打たれた。

 どれだけストライクゾーンで勝負できるようになるかが、今後の課題ではないだろうか。

(取材=田中 裕毅

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ベンチに引き返す山梨学院先発・榎谷 礼央

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マウンドに集まる山梨学院ナイン

山梨学院vs白鷗大足利 | 高校野球ドットコム
マウンドに集まる白鴎大足利ナイン

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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