喜界vs種子島
努力が勝利に結実・喜界
喜界7点目サヨナラ打
1点を先制された喜界は2回裏、7番・盛崎仁(3年)のセンター前タイムリーで同点に追いつき、9番・三浦暖人(2年)の走者一掃ライトオーバー三塁打、1番・竹下慎之佑(2年)のセンターオーバー二塁打で計4点を挙げて逆転に成功した。
5回は1番・竹下のソロ本塁打、4番・盛聖也(2年)のレフト前タイムリーで2点を追加した。
主導権を握って試合を進めていたが、7回途中でエース村田健太朗(3年)が降板して以降、流れが変わる。
種子島は8回表、7番・深田悠真(3年)のライトオーバー二塁打で2点差とする。9回表は4番・杉勇瑠(3年)のレフトオーバー二塁打、5番・小川龍哉(2年)の犠牲フライで同点に追いついた。
なおも二死二塁と勝ち越しのチャンスだったが、喜界の2番手・竹下が踏ん張り勝ち越しを許さなかった。
勝負は今大会初の延長戦へ。7回以降は淡白な打撃が続き苦戦を強いられた喜界だったが、11回裏に一死から9番・三浦がレフトオーバー二塁打で出塁。二三塁として2番・富田楓河主将(3年)がレフト前タイムリーを放ち、サヨナラ勝ちを決めた。
喜界は2時間41分の死闘を劇的なサヨナラ勝ちでものにした。殊勲のサヨナラ打を放った富田主将は「きつい練習や努力してきたことが、結果につながって良かった」と力強く振り返った。
6回までは投打、攻守がかみ合い、喜界ペースで試合を進めた。1、5、6回のピンチはいずれも併殺でしのぎ、最少失点で切り抜けた。「3つも併殺がとれるとは! 最終的には守備の粘りが勝利を呼び込んだ」と松元修監督も驚くほどの成長ぶりを見せていた。
ただ「リードしている余裕は感じなかった」と松元監督。エース村田の球数が5回時点で100球に達しており、オーバーペースだった。7回に足がつって降板。リリーフした2年生・竹下も初回から攻守にフル稼働しており、足がつった状態で投げ続けざるを得なかった。
じりじりと追い上げられ9回に同点に追いつかれる。相手の攻撃時間は長く、こちらの攻撃は淡白に終わって好機も作れない。敗色ムード濃厚だったが「1球、1打に集中し、攻撃につながる守備を意識した」と富田主将は言う。我慢が実を結び、最後のサヨナラ打の場面は「力が抜けて気持ち良く振り抜けた」。
選手14人。決して多いとはいえない戦力の全てを出し尽くした。松元監督にとって、富田主将は「しこたま、がって(叱って)きた選手」の代表格。試合中もいろいろ細かい指示を出していたが、11回の打席は信じて「思い切り行け!」と言うだけだった。勝者と敗者が分かれる厳しい勝負の世界。「彼らを『勝つ側』にできた」ことが指揮官として何よりの喜びだった。
(文・写真=政 純一郎)