幸田vs知立東
幸田が7回、見事な一発、満塁本塁打で鮮やかに逆転
逆転満塁本塁打を打ち笑顔でホームインする幸田・志賀君
知立東はここまで3勝で県大会進出を決めている。それだけに、少し余裕を持った戦いは出来るであろうと思われた。
一方、幸田は1勝2敗と苦しい状況だ。そして、この試合でも中盤までリードを許していた。それでも、最大4点リードされていたものを徐々に詰めていっていた幸田。6回に8番荒木君のタイムリー打で2点差とした。
そして、7回には捕手からマウンドに上がった岡部君に対して、一死後綱島君が安打して二盗と暴投で二死三塁とする。三塁走者をやや意識したのか、岡部君は連続四球で満塁としてしまう。ここで、知立東ベンチは満を持してエースナンバーを背負っている青山君を投入した。
ところが、その初球だった。6番志賀君は「一番のツボ」と言われているところへ入ってきたところを叩くと、打球はことのほか伸びてそのまま柵越となって逆転満塁本塁打。日比悠介監督は、「まあ、まぐれでしょうが、よく打ったと思います。あそこしか打てないかも知れませんが、そこで打ちましたからね」と、苦笑しつつも殊勲の快打を称えていた。志賀君自身としては、練習試合も通じて2本目の本塁打ということだが、今後へ向けても自信にはなっていったであろう。
幸田の戸田君は、この逆転で7~9回の終盤はしっかりとした投球で知立東打線を抑え込んだ。戸田君は体幹もしっかりしているなという印象で、投手としてのまとまりも悪くはなかった。
3回こそ、中軸に3連打されるなどして、冷静さを失い、7番三宅君にも2点タイムリー打を打たれるなどして4点を奪われたが、4回からは徐々に立て直していき踏ん張っていた。そして、その踏ん張りが、7回の志賀君の一発逆転に結びついていったと言っていいであろう。
ベンチから、日比監督も、「諦めるな、一つずつ返していくぞ」としきりに声をかけていたが、それに選手たちも見事に応えたということになった。
昨年に続いて、今春も、3月は新型コロナの影響で、どのチームも十分な練習は詰めていない。愛知県のほとんどの公立校はこの一次予選前までには、練習試合として非常に厳しい状況だったという。
前日の土曜日の大雨もあって、試合としては、やれて14日の日曜日1日だけというところが多かったようだ。それだけに、こうしてリーグ戦で戦えるということは、選手たちにとっても非常に価値のある経験になっていると言えよう。
西三河地区は、どのチームでも、最低4試合は行うことが出来た。実戦経験という意味からも、この経験は大きいと言っていいであろう。ことに、この日の幸田のような勝ち方をしていけば、チームとしても「諦めなければ、何かあるぞ」ということの経験値としても大きいのではないだろうか。
こうして、高校野球は、多くの人の思いを育てながら発展していってほしいと願っている。
(文=手束 仁)