試合レポート

浦和学院vs上尾

2020.09.22

浦和学院対上尾、勝敗を分けた8回の攻防

浦和学院vs上尾 | 高校野球ドットコム
8回裏尾崎センター前2点タイムリー

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 県大会抽選会の投票で浦和学院が31票、花咲徳栄が30票ということで、第一シードとして今大会に臨む浦和学院だが初戦の相手は上尾だ。ちなみに、直近の新チーム同士の練習試合では8月14日など既に3試合戦い、上尾浦和学院に3連勝している。

 浦和学院サイドはエース級が投げていないというエクスキューズはあるがそれを差し引いても今大会初戦屈指の好カードであることに間違いはない。過去を紐解いても浦和学院上尾の試合は森監督、高野監督共に上尾高校OBで野本イズムを継承した先輩後輩という間柄、互いの意地もありもつれる試合が多い。実質ベスト8相当の試合であろう。試合はその前評判通りの展開となる。

 まず浦和学院は昨秋にレギュラーとして既に経験しているメンバーが多い。吉田匠吾(2年)、吉田瑞樹(2年)、藤井一輝(2年)、高松陸(2年)、松嶋晃希(2年)などはそれに該当する。ただし、昨秋旧チーム結成当初はエースで4番など投打の軸であった三奈木亜星(2年)は未だ控えである。投手陣は現状では左腕の宮城誇南、右腕の小田部夏行と2人の1年生がメインで投げている。一方の上尾は今夏登板経験ある新井陸斗(2年)と中澤颯汰(2年)が旧チームから残ったが野手は総入れ替えとなっている。

 先発は上尾・新井、浦和学院・宮城と両エースが先発し試合が始まる。

 先制したのは浦和学院であった。

 3回裏、この回先頭の松嶋がライトスタンドへソロ本塁打を放ちまず1点、さらに二死後、2番・松田大成(2年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く尾崎亘(2年)もライト前ヒットを放ちさらにライトがファンブルする間にそれぞれが進塁し二死二、三塁とする。ここで4番・吉田瑞が左中間フェンス直撃の2点タイムリー二塁打を放つなど浦和学院はこの回一挙3点を奪い、上尾・新井をこの回でマウンドから引きずり降ろす。

 一方、上尾の反撃は5回表であった。

 一死から2番・栗原大晴(2年)がセンター越えの三塁打を放ちチャンスメイクすると、続く土屋拓真(2年)はピッチャー前へのボテボテのゴロを放つ。この打球に三走・栗原は自重するが結局内野安打となり一死一、三塁とチャンスが広がる。ここで4番・金丸健司(1年)がライトへ犠飛を放ち上尾が1点を返し浦和学院・宮城をこの回でマウンドから引きずり降ろす。

 だが浦和学院は6回裏、2番手・永井楓馬(1年)を攻め、この回先頭の小田部が四球を選び出塁すると、続く松嶋はサード前へボテボテの打球を放つとこれが内野安打となり無死一、二塁とチャンスを広げる。9番・宮城の犠打は失敗に終わるが、続く吉田匠が一塁線を破るタイムリー二塁打を放ち再度3点差をつける。

 それでも粘る上尾は7回表、2番手・小田部を攻め一死から3番・土屋がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く金丸が死球を選び一死一、二塁とチャンスが広がる。ここで途中出場の川田駿介(2年)がセンター前タイムリーを放ち1点を返し浦和学院・小田部をマウンドから引きずり降ろすと、代わった3番手・吉田匠に対してもその代わり端、代打・山本大智(2年)がライト前へタイムリーを放ち1点差とする。

 浦和学院もその裏3番手・中澤を攻めこの回先頭の尾崎が四球を選び出塁すると、続く吉田瑞のサードゴロは併殺を狙ったサードとセカンドの連係が合わずオールセーフとなり無死一、二塁とチャンスが広げる。だが、5番・藤井の犠打は決まらず凡退すると、後続も倒れこの回無得点に終わる。

 そして4対3のまま8回の攻防へと進む。


 上尾は8回表この回からマウンドへ戻った宮城を攻め、この回先頭の中澤がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く後藤貴希(2年)もライト前ヒットを放ち無死一、二塁と絶好の得点機を迎える。だが、相手のチャージに対しバントの構えの栗原は1球様子を見たのだが、二走・中澤が大きく飛び出しキャッチャーに二塁封殺されてしまう。これで息を吹き返した浦和学院・宮城に対し後続も倒れ上尾は結局無得点に終わる。

 一方の浦和学院もその裏、上尾と同じような展開を迎える。この回先頭の宮城がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く吉田匠もセンター前ヒットを放ち無死一、二塁とチャンスを広げる。続く松田がきっちりと送り一死二、三塁とチャンスを広げると、3番・尾崎がセンター前へ2点タイムリーを放ち6対3と突き放し勝負あった。

 結局最終回も上尾の反撃を無得点に抑えた浦和学院が粘る上尾を振り切り6対3で初戦を突破した。

 まずは上尾だが、「旧チームに比べ今年は投手陣を中心とし守備から入るチーム」と高野監督も謙遜するがそれでもインサイドアウトを意識した打撃で、この日も強打の浦和学院打線を上回る13安打を放つなど、王者をあわやという所まで追い詰めた。

 だが、悔やむべくは8回表の攻撃であろう。ありがちなシーンではあるが、足にあまり自信がなく一歩でも早く三塁へ到達することを意識し第2リードを大きく取る二走に対し、シフトを敷かれバントの構えの打者がストライクを見逃し二塁封殺されることは起こり得るシーンではあるが、優勝候補相手にミスをしていては勝てない。

 浦和学院と練習試合を3回も対戦し、もちろん上尾サイドとしても得られる情報はあるが、浦和学院打線に投手陣の球筋を見られてしまっているのはこの日はやや不利に働いたか。とはいえ、公式戦経験の少ない新チームの上尾としてはこの時点で浦和学院と好ゲームができたことは自信につながるであろう。

 対する浦和学院上尾との接戦を物にしたが、経験豊富なチームながらヒット数で上回られ、バントミス2つに走塁ミスなど決して褒められた内容ではない。投手陣もピリッとしない内容でありまだまだ課題は多い。とはいえ、選手のポテンシャルが高いのは一目瞭然だ。昨秋旧チーム結成当初3番を打ちこの日本塁打を放った松嶋が現在8番に座り、三奈木に至っては現在控えに甘んじている。その分特に投手陣では才能ある1年生が出てきている。

 この日宮城の最速は136km、再登板を含め上尾打線に9安打を浴びるなどピリッとしなかったが、要所を締め7回1失点で悪いなりにまとめることができ大崩れしない。さらにはスクランブル登板でショートの吉田匠を登板させるなど、ベンチも色々な事を想定できている。

 後は本来大黒柱となるはずの三奈木の復活待ちといった所であろう。チーム内でのハイレベルな競争を続ける浦和学院がまずは上尾という大きな山を越えた印象を受ける。とはいえ浦和学院のブロックは曲者揃いのブロックである。一戦一戦勝ち上がり関東大会まで駒を進めることはできるか。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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