近江vs水口東
絶対王者・近江が夏3連覇を達成!
マウンドで歓喜の輪を作る近江の選手たち
近江は1回裏、相手守備の乱れなどから無死満塁のチャンスを作ると、4番・新野翔大(2年)が中犠飛を放ち、先制点を挙げる。さらに一死一、三塁から5番・長谷川勝紀(3年)の内野ゴロと6番・久保田陽成(3年)の中前適時打で追加点を挙げ、初回から3点のリードを奪った。
対する水口東は2回表、二死一、三塁から8番・神田一樹(2年)が右前適時打を放ち、1点を返す。これで流れを呼び戻したかったが、先発の大橋廉(3年)がピリッとしない。2回裏に3四球から二死満塁のピンチを招くと、長谷川に遊撃手のグラブを弾く、2点適時打を浴びると、続く久保田にも中前適時打を打たれ、リードを5点に広げられてしまった。
水口東の村田潤平監督は前日の準決勝に登板しなかった大橋を万全の状態で送り出したが、「決勝の重圧というか、近江さんのユニフォームを見て体が動かない部分があったと思います」と大橋の立ち上がりを悔やんだ。3回以降は緩急を上手く使って、追加点を与えなかっただけに2回までの乱調がもったいなかった。
準決勝で6回72球を投げていた近江のエース・田中航大(3年)も序盤は本来の投球ではなく、コントロールが乱れる場面もあった。2回以外は得点を許さなかったが、多賀章仁監督は5回を終えた段階で、「次の回が最後」と田中に伝えたという。しかし、田中は「この番号(1)を背負っているなら、優勝の瞬間まで絶対に僕が投げ切りたいと思っていたので、『投げさせてください』と話しました」と続投を直訴。自らの言葉でスイッチが入った田中は6回以降、一人の走者も出さなかった。最後は外角のストレートで三振を奪い、ゲームセット。マウンドには歓喜の輪ができた。
「皇子山球場で優勝の瞬間にマウンドに立つのが小さい頃からの夢だったので、最高の瞬間でした」と優勝の瞬間を振り返った田中。この先に甲子園はないが、長年の夢をかなえることができた。
歓喜に満ち溢れたチームの中で悔しさを味わったのがドラフト候補の主将・土田龍空(3年)だ。プロ入りを見据えて木製バットで大会に臨んだが、準決勝、決勝では無安打に終わり、大会通算でも18打数4安打、打率.222と苦しんだ。
「芯が小さい中でミートも全然できていないですし、バットも振れていなかったので、対応力がなかったかなと思います。非常に苦しんだ大会だったんですけど、この悔しさをしっかり練習にぶつけて頑張っていきたいです」と自身の打撃は納得いくものではなかった。そんな中でも「3連覇という目標を達成できて良かったです」とチームの目標を達成したこともあり、清々しい表情を見せていた。
「この試合もウチらしくノーエラーで、バッテリー中心に守り勝つ野球ができたと思っています」と試合を振り返ったのは多賀監督。田中がコースを突いて打たせて取り、それにバックが堅い守りで応えて見せた。近江の守備は土田に注目が集まるが、一塁手の新野、二塁手の橋本歩音(3年)、三塁手の鈴木脩太(3年)も守備のレベルはかなりのもの。練習時間が限られる中でも自分たちの持ち味をしっかりと出し切った。
攻撃面では6番の久保田が2打席連続タイムリーの活躍を見せた。昨年まではベンチ外で、大会直前にもメンバー外の選手がメインとなるメモリアルゲームに出場していた選手だが、大会が始まってから調子を上げ、準決勝からスタメンに抜擢されるようになった。下級生にも主力選手がいる中で、「最後のところで3年生が出てきてくれた」(多賀監督)と最上級生の成長がチーム力をさらに押し上げた。
これで近江は県大会で6季連続優勝かつ30連勝という偉業を成し遂げた。新チームも4番の新野や投打で大活躍を見せた山田陽翔(1年)といった力のある下級生が多く残り、近江の黄金時代はまだまだ続きそうだ。
敗れた水口東も過去最高成績を更新する準優勝は立派な結果だ。3年前の4強入りを見て入学を決めた3年生が先輩たちの記録を上回った。公立の進学校ではあるが、「地域を含めて一丸となったら、ここまでやれるんだと希望を感じさせてくれました」と村田監督は選手たちの持つ可能性に感銘を受けていた。この試合を見て、水口東で甲子園に行きたいと思った中学生も多くいたことだろう。近い将来に甲子園初出場を果たす日がやってくるかもしれない。
(記事=馬場遼)