沖縄水産vs沖縄尚学
沖縄水産執念の同点打、そして延長サヨナラスクイズ!
沖縄水産・古波蔵
昨年の夏、同じく三回戦で顔を合わせた両雄。そのときは沖縄尚学が勝利したが、今回は沖縄水産が見事リベンジ。特に、1点差を追う9回裏の執念は素晴らしいものだった。
流れが変わる!確信した沖縄水産ベンチ
無死一・二塁や無死満塁のチャンスをもらいながらも、中々追い付けない沖縄水産。しかし「流れは変わった」と、百戦錬磨の上原忠監督は確信していた。
先制したのは沖縄尚学。2回、このイニング先頭の4番與谷友希がライト前ヒットで出塁。続く髙見健人もレフト前へ続き無死一・二塁。しかし沖縄水産エース古波蔵悠悟が、ここから粘る。次打者を三振に斬ると、7番知念琉華をショートゴロに。6-4-3と渡る併殺、と思いきや相手に痛恨のミスが生じ二塁から與谷友希が生還した。
代打佐和田の見事なタイムリー
さらに沖縄尚学は5回、城間陽平がヒットで出塁すると犠打と相手のエラーで一死二・三塁。ここで沖縄尚学が先に動く。先発の大湾朝日の打席で代打佐和田大貴が5球目を見事センター前へ運び三走が生還。さらに相手の中継の隙を突いて佐和田が二塁を陥れる。なおも二・三塁であったが、ここから古波蔵悠悟がギアをさらに上げる。
古波蔵気迫あふれる三振斬り
「以前は最初から最後までトップギアで投げていたが、この夏になって投手としての成長を凄く感じる。」とは上原忠監督。ローギアとミドルギア、そして大ピンチのときに発するトップギアを使い分けられる投手こそが、完投しチームを勝利に導く。それをこの大事な場面で古波蔵悠悟がやってのけた。1番島袋皓平、2番當銘椋太と連続三振斬り。この試合、與谷友希の打席で見せた142kmのスピードはもちろんコントロール、テクニック、スタミナそして経験値。全てを併せ持つ大会ナンバーワンサウスポーが魅せた気迫のピッチングが、流れを押し返す起点となった。
138が出た沖縄尚学・松田
沖縄尚学・松田
その裏、沖縄尚学がマウンドに送ったのは永山蒼。130km後半のストレートを投げ込んできたが、この日は制球力に苦しむ。ヒットと四球でいきなり無死一・二塁のピンチを迎えてしまったが昨年の夏、甲子園のマウンドを経験している右腕の意地を見せる。2番をショートフライに打ち取ると、後続も外野フライに斬り無失点。
「投手の交代は本当に難しい。先発に抑えられていた僕らは、この投手交代から流れが変わるぞと確信していた。」と上原忠監督。もらった得点チャンス。さらに上位打線。それでも無得点に終わったが、沖縄水産ベンチは流れを押し返しつつあった。
6回、沖縄水産は永山蒼の球を見極めて二者が連続して四球を選ぶ。見かねた沖縄尚学ベンチがマウンドに送ったのは、初めて背番号1を背負うサウスポー松田大輝。最初の打者を四球で歩かせてしまい、無死満塁のピンチを迎え次打者に対してもフルカウント。ボール球を投げられない苦しい場面だが、宜野座戦で13個もの三振をマークした左腕も、138kmをマークするなどギアをトップに入れる。
最後は渾身のストレートで内野ゴロに斬り、併殺打のみの最少失点で切り抜けた。
松田大輝は7回にも二死満塁、カウント3ボール2ストライクと再び追い込まれたが、三振斬りで同点を許さない。8回には三者凡退とし、このまま逃げ切るかと思われた。
執念の同点打、そしてサヨナラ勝ち
「こっちは1点負けているけど、考えてみよう。どうしても逃げ切りたい向こうの精神的なものは厳しいはずだぞ。」9回裏、追い込まれそうな雰囲気を言葉で拭った指揮官にナインが応えた。一死からヒットと四球で一・二塁。期待された4番古波蔵悠悟だったが、松田大輝が渾身の三振斬り。だが5番名幸大輔が執念のレフト前タイムリー。沖縄水産がついに、土壇場で同点に追い付いた。
延長10回、無死一・二塁から始まるタイブレーク。犠打を決めた沖縄尚学だったが、ここで古波蔵悠悟が140kmのストレートを投げ込み三振斬り。次打者をサードゴロに打ち取り無失点。その裏、きっちり送った沖縄水産は9番田島朝人がスクイズ。だが松田大輝も簡単にはさせない。力ある厳しいコースに放り三塁前の小フライにする。
飛び込んだサードの與谷友希。これがグラブに入っていたら試合は分からなかったが、沖縄尚学にとっては無情となる、ほんの少しの距離でボールが溢れる。
田島朝人は次もスクイズを試みるが、これもファール。2ストライクと追い込まれたが「カウントは悪くさせたくないはず」との読みで沖縄水産ベンチが出したサインは三連続スクイズ。打球が松田大輝のグラブをかすめ、三走が生還。沖縄水産がサヨナラ勝ちで熱闘に終止符を打ち、チームとしては2010年以来となる夏ベスト8進出を果たしたのだった。
記事=當山 雅通