試合レポート

都立武蔵野北vs都立田無

2020.07.12

都立のドクターK・武蔵野北の一井、夏に向けて奪三振11

都立武蔵野北vs都立田無 | 高校野球ドットコム
都立武蔵野北の好投手・一井日向汰

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 昨年の7月10日、強豪・明大中野八王子都立田無の健闘の前に土俵際まで追い詰められた。結局6-5で明大中野八王子が逆転サヨナラで勝ったものの、都立田無の奮戦は、高校野球ファンに強い印象を残した。
 あれから1年経った7月11日、[stadium]都立田無グラウンド[/stadium]に、好投手・一井日向汰を擁する都立武蔵野北を招いて、練習試合が行われた。

 都立田無にとってこの日は、昨年は新チームに代替わりする日であったが、今年は両校ともこの試合が初の練習試合になっている。コロナ禍で外出自粛の中、「外を走れと言うわけにもいきませんので……」と田無の内田光治監督は語る。ただLINEで生徒から来た質問に答えたりし、筋肉を増やすなど、意識を高く自主トレーニングをしてきた生徒もいたという。都立校の場合、3~5月は全体の練習が全くできず、6月に入っても、15日から限定的に始まったような状況だった。そのため、「最初の1週間は、土に慣れることから始めました」と都立武蔵野北の原壮一監督は言う。

 そういう状況だけに、まず両校の仕上がり具合が気になったが、それ以上に注目したかったのは、都立武蔵野北の左腕、エースの一井日向汰の投球であった。都立武蔵野北は、秋は1次予選で敗退したものの、初戦は都立農業都立東村山都立府中の連合チーム相手に奪三振15.2戦目の都立紅葉川戦は敗れたものの、奪三振9を記録している。最速は138キロ程度だが、カットボールに近いものも含め、複数のスライダーと、チェンジアップなどを駆使し、三振を奪える投手である。

 立ち上がり、一井はやや不安定であったが、初回を無失点で切り抜けると、その裏、都立武蔵野北は1番・横山右京が振り遅れ気味ながら、三塁線を破る二塁打で出塁すると、3番・中島海斗の左前安打でまず1点。その後も2回に1点、3回には一井自身の二塁打などで1点、4回は横山のこの試合2本目の二塁打などで1点を追加する。

 一井の投球は2回からさえ始める。2回表は四球が1個あったものの、3つのアウトは全て三振。ボールが都立田無の打者のバットの上を通過することが多く、球が伸びている。そこにコースギリギリに落ちるスライダーを投げてくるので、打者は手を出さざるを得ず、三振が多くなる。一井は3回、4回、5回と毎回奪三振2ずつを記録して、三振の山を重ねる。

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都立田無の3番・服部由聖

 しかしながら球数も多く、後半になると、都立田無の打者も合い始める。7回表には、5番・石澤寛太の中前安打を皮切りに、四球、敵失で無死満塁となり、併殺の間に石澤が還り、田無が1点を返した。

 8回、9回も田無は安打を記録したが、さらなる追い上げはならず、一井はさらに奪三振2を追加して、結局この試合、奪三振11を記録した。
 武蔵野北打線は8回裏にも、横山のこの試合3本目となる二塁打などで3点を追加して、8-1で都立武蔵野北都立田無に快勝した。

 都立武蔵野北の原監督は一井のこの日の投球について、「今までで一番良かったです」と語る。今年初の実戦登板で、立ち上がり不安定だったものの、来週に始まる大会に向けて、順調に仕上がっているといった感じだ。一井は、「最初は力んだところがありましたが、変化球中心に変えてから落ち着きました」と語る。コロナによる自粛期間中、「走り込みなどは、していません」と語り、どこか飄々とした感じがあるが、プロへの思いもあり、志望届提出も考えているとのことだ。まずは、夏季大会での投球に期待したい。

 一方敗れた田無の内田監督は、「久しぶりの試合で、うまくやろうとし過ぎて、ミスが出ました」と語る。それでも、一井投手の球威が後半少し落ちると、対応していたので、基礎的な力はあるはずだ。後は、準備期間はあまりに少ないが、どこまで仕上げることができるかだ。田無は西東京大会の1回戦で東京都市大等々力と対戦し、勝てば、日大三と対戦することになる。「先をみずに1戦1戦です。でも三高と戦いたい気持ちはあります」と内田監督は語る。

 試合前後、ホームベースを挟んだ両校の選手たちは、帽子をとってお辞儀をするだけで、声は出さない。コロナ時代の特別な夏が始まる。

(取材=大島裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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