試合レポート

向上vs桐蔭学園

2019.07.20

打撃と走塁の融合で桐蔭学園を下しベスト16!!

 [stadium]サーティーフォー相模原球場[/stadium]で行われた4回戦。
センバツ出場ながらも、今大会はノーシードとして戦う桐蔭学園
その桐蔭学園を迎え撃つ形となるのが、第2シードの向上である。
この両校は、昨秋と今春に続いて3度目の試合で勝負を決する形となり、手の内も知り尽くした試合。

 まずは、桐蔭学園先発の伊禮海斗の立ち上がり。
左打者の1番国崎澪に変化球を上手く合わされて、レフト前ヒットを許す。2番岡崎大輝を打ち取るが、1塁走者の国崎に盗塁を許し、一死一塁とする。しかし、後続を打ち取り無難な立ち上がりをみせる。

 対する、向上先発の松村青は簡単に二死を奪うが、3番森敬斗に安打を許す。しかし、得点には結びつかず無失点で終える。松村は立ち上がりからキレのあるストレートと横に滑るスライダーをコース一杯に投げ込む投球を展開。

 動きがあったのは、2回表の向上の攻撃。
二死から、7番松村が四球、8番吉田風海がセンター前ヒットでチャンスメイクする。
ここで、9番森川大誠がレフト前ヒットを放ち三塁ランナーが生還で1点を先制。外野は定位置であったが、三塁コーチャーは腕をぐるぐる回し得点を奪った場面。この試合全てにおいて、向上のランナーの走塁意識の質が高く、普段の練習から意識しているのだろうと想像が出来る。

 3回表の向上はさらに桐蔭学園を攻め立てる。先頭2番岡崎がライト前ヒットで出塁。続く3番菅野もセンター前ヒットで出塁し、無死一、二塁のチャンスを迎える。その後、一死一、三塁で5番赤城昂太郎がレフトへタイムリーツーベースヒットで1点を追加。一死二、三塁となったところで桐蔭学園ベンチが動く。エースの伊禮をここで諦め、2番手に背番号10の山崎をマウンドに送る。流れを変えたい桐蔭学園ベンチだが、6番小泉瑛輝の内野安打でさらに1点追加。ここで、二死一、三塁で一塁走者がスタートを切る。捕手・勝間田礼琉の二塁送球はショーバン送球になり、三塁走者が隙をつき一気にホームに生還。足を使った攻撃で、桐蔭学園を4対0と突き放していく。

 桐蔭学園ベンチとしては、エース伊禮にもっと粘ってほしかったのが本音だろう。しかし、序盤からボールにキレがなく、捉えられている打球を目立ったための決断。この判断は、やむをえない。

すぐに追い上げていきたい桐蔭学園打線。その思惑通り、先頭の8番山崎がレフト前ヒットで出塁。まずは、ランナーを貯めていきたいところだが9番勝間田の当たりは併殺打となる。続く、1番木本圭一の凡打となり結局、三者凡退。

 勢いは俄然、向上ベンチにある。この回も先頭が四球で出塁。一死一塁となったところで、一塁ランナーの国崎が盗塁を決めて一死二塁。その後、二死二、三塁となり4番石坂健斗がライト前にタイムリーヒットで2点を追加。試合の展開を優位に進め、コールド勝ちが頭によぎるほどの攻めっぷり。塁に出れば足を使い、得点圏ではキッチリランナーを返す集中力。
非常にレベルの高い野球を披露していく。


 イニングを重ねるごとに、厳しい展開となっていく桐蔭学園
この回も先頭2番山本慎太朗が出塁。その後、四球が絡み一死一、二塁となって5番馬場愛己の打席。
馬場の当たりは、ピッチャー前に転がる。この打球を併殺に焦った、松村が二塁悪送球。一死満塁とチャンスを拡大する桐蔭学園。ここで、6番川久保瞭太がレフト前にタイムリーヒットで1点を返す。イケイケの桐蔭学園ベンチだったが、7番富山絢心の打球はショートライナー。二塁ランナーが戻れず、併殺打となり1点止まり。

 7対2と迎えた向上7回表の攻撃。
一死後、8番吉田がライト線へツーベースヒットで出塁。9番森川も死球で繋ぎ、一死一、二塁。1番国崎も粘りながら四球で一死満塁。これ以上の点数は避けたい桐蔭学園は動く。
3番手渡部に代わって、左腕の鈴木がマウンドに上がる。外野陣も一段と前に守備位置を取る。鈴木のスライダーはキレていた。2番岡崎、3番菅野を連続三振に打ち取る好リリーフ。強心臓っぷりを発揮し打線に流れを作る。

 鈴木の好リリーフに応えたい打線は、7回裏の攻撃。
一死から、7番富山がライト前にヒットで出塁。8番鈴木も三遊間への内野安打を放ち一死一、二塁と反撃のムードを高める。9番清水は四球で一死満塁。この大チャンスで1番木本は内野フライになるも、2番山本がタイムリーヒットで1点を返す。この回も松村が最少失点に抑え万事休す。

その後は、スクイズなど小技で試合を決めた向上が勝利した。

 向上の試合運びは強豪そのものであった。
2、7、9回以外は必ず先頭バッターは出塁し、ランナーに出れば大きなリードで揺さぶりをかける。盗塁はもちろんなのだが、走塁に対しての意識やセンスの高さを感じた。
決して深くはない外野フライでも進塁。送球間に進塁やワンバウンドでの進塁など、常に相手の隙を探りながら野球をする向上。これは、常日頃の練習から意識していないと大一番では行えないこと。桐蔭学園の捕手を務めた、勝間田はランナーが気になって仕方なかっただろう。

 敗れた桐蔭学園
昨秋には、向上に勝利して春では敗戦を喫してノーシードとなる。3度目の対戦で勝利したいところだが、試合は上手くはいかなかった。まずは、先発の伊禮が2回1/3でマウンドを降りてしまい向上を勢い付けてしまった。2番手以降の投手陣もズルズルと点を奪われ厳しいディフェンスとなってしまったことは確かだ。
攻撃陣も毎度毎度ランナーを出して、チャンスを演出したが塁を賑わすだけで終わってしまい肝心な一本が出なかった。松村の出来もよく、コースや球種が絞れずに凡打併殺打の山を重ね敗戦と至った。

 勝利した向上は、横浜創学館との試合が決まった。
打線と打線のぶつかり合いになるのか?
それとも、足を絡めた試合を展開するのか?

 次戦も見逃せない試合になると予想される。

(文・=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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