試合レポート

広陵vs西条農

2019.07.12

広陵三連覇に向けて順調な船出!14安打9得点の横綱相撲で開幕戦を制す

 令和初の夏はややも涼しい気候であるが、やはり夏の声は高校野球とともに来るものだ。第101回広島県高校野球大会の開幕式は晴天に恵まれ、気温も上昇。暑い夏がいよいよ始まったのだと実感する。

 今年開幕カードは、広島大会三連覇を狙う広陵西条農の試合になった。両校とも甲子園出場の実績もあり、実力校同士の開幕カードである。横綱である広陵はもちろんのこと、西条農は去年も広陵とぶつかり、0対10で敗戦するなどリベンジを含めて注目の一戦だ。

 先攻をとった広陵は、はやばやと先制を決めたいところだが、西条農先発の時光祥吾(3年)が待ったをかける。球速こそ130キロ前後ではあるが、すっと沈むスライダーにタイミングを外すカーブを織り交ぜ、緩急自在のピッチングで、一回を三者凡退に抑えた。一方の広陵エースの河野佳(3年)もこうした大舞台に慣れている。選抜では八戸学院光星を完封し、六月に行われた大阪桐蔭を迎えての招待試合でも投げている本格派の右腕だ。

 その右腕に、西条農打線は冷静な対応を見せた。速球で鳴らす河野のスピードボールをとにかく見極める。高めの釣り球には決して手を出さない。結果としては三者凡退に終わったが、あわやを感じさせる内容だった。

 試合が動いたのは三回だ。先頭の8番・釣流大遂(3年)が死球、次打者の投手河野が送りバントを試みるが失敗し、釣流は封殺。河野も送球ミスを見て二塁を陥れようとするが、一塁手が素早い送球でタッチアウトと二死をとられる。普通なら勢いが死んだとみるが、広陵はここからが粘り強い。

 先頭に戻って1番・岑幸之祐(3年)がライト線に落ちる二塁打を放つと、2番の藤井孝太(3年)もまた同じような場所にポトリと落とす二塁打。強引な長打攻勢で流れを一気に引き寄せる。すると3番の渡部聖弥(3年)も鮮やかなセンター返しで二塁走者の藤井を生還させる。西条農としては、緊張感のある展開を持続させたいところだったが、5番の宗山塁(3年)にもレフト前に落ちるタイムリーで一点を献上、結果的に三点のビハインドを背負うことになった。

 すぐにでも追いつきたい西条農だが、三点のリードで気が楽になったのか、河野はなかなか隙を見せない。それどころか、最速145キロの速球を打ちあぐねる。芯でとらえた打球が正面を突くなどの不運もあった。それでも三回一死から、9番の橋本昂汰(3年)が四球で出塁し、一番金谷貴人(2年)のセンターフライ後に、2番・福地翔太(3年)がヒットで出塁。得点圏にランナーを進める。上位打線は河野の速球に狙いを絞り、事実鋭い打球を飛ばしているので期待が持てたが、3番の常広大貴(3年)がショートゴロに倒れる。本塁が遠い。


 逆に広陵は先制点を入れて元気いっぱいである。五回の攻勢も、二死からだった。走者なしの二死から、4番の森勝哉(3年)が四球で出ると、宗山がセンターへの大飛球を放ち、森が生還。次打者の金澤礼大(3年)もライト前に運んで5対0。二死走者なしから得点を重ねる。

 こうなると、西条農も苦しい。好投手である河野から五点を取らなければならない。制球が不安視されている河野だが、この日は絶好調。ボールを見極めようとする西条農打線に付け入るスキを最後まで与えなかった。結局五回と三分の二を投げ、河野は無失点でマウンドを降りる。

 広陵は七回にも好機を作る。先頭の藤井が技ありの流し打ちでレフト前に運ぶと、後続が奮起。渡部がセンター前。森はファーストゴロだったが、結果として進塁打となり、一死二塁。広島県大会の規定では七回七点差でコールドとなるため、西条農の内野陣は背水の陣だ。前進守備を敷き、本塁でのダブルプレーを狙う。打席には今日三打数二安打の宗山を迎えたが、ここは敬遠気味に歩かせ、一死満塁。状況を整える。打者六番、これも絶好調の金澤、選抜ではクリンナップも任された好打者だ。金澤に投じた二球目、軽くはじき返した打球が一二塁間を破り、二者生還。七点目が入った。この回はその後も、代打で出場の児玉日出夫(3年)と途中出場でマスクをかぶった主将の秋山功太郎(3年)の連続タイムリーで9対0となる。

 七回裏、どうにか一矢報いたいが、広陵はめまぐるしく投手を交代させる奇策にでる。六回二死からマウンドに立っていた二番手のサウスポー石原勇輝(3年)は一死を取った後に速球派左腕の高太一(3年)に交代。一死を取り、七番の尾久葉研徳(3年)に四球を出した後、今度はセンターを守っていた森をマウンドに上げる。狙いを絞ってきた西条農はこの奇策に対応することが出来ず、最後の打者、代打の川口悠真(3年)が見逃し三振に倒れ、ゲームセット。

 開幕戦であり、様々な高校がそのまま残って観戦していたが、各高校とも当然、打倒広陵を目標の一つに掲げている。甲子園に出場するためには倒さなければならない大敵という認識はどこの高校にもあるが、この結果には驚いたのではないだろうか。豊富な投手陣、隙のない打線。めまぐるしく変わるレギュラーとほとんど力の差のないサブメンバーたち。
 その証拠に選抜に四番で出場した中村楓大(3年)は代打出場、主将であり、背番号2をつけた秋山も五回途中まではマスクをかぶらなかった。選手層の厚さは厳しい夏の大会では強さに直結する。そうした横綱である広陵を如何に倒すかが今夏の大会の一つの楽しみではないだろうか、と思わせる試合だった。

(文:編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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