広島商vs如水館
平成最後の春大会、優勝したのは名門広島商
試合前の挨拶
春季広島県高等学校野球大会は、28日、[stadium]呉二河球場[/stadium]で広島商業と如水館高校の決勝戦ということになった。両校とも夏に強く、広島商業は夏22回出場、優勝6回の輝かしい実績があり、如水館も7回の出場で、最高成績はベスト8と、広島県の高校野球を名実ともに引っ張ってきた実力校同士の対戦だ。近年は迫田守昭監督率いる広島新庄高校や、県立高ながら春選抜に2回出場した市立呉高校なども出てきてはいるが、このカードが決勝に上がることに、疑問符をつける人はいないだろう。
試合は初回、準決勝を11対2で勝ち上がってきた勢いそのままに、先攻をとった広島商業が鮮やかに先手をとった。一回、一死から二番の水岡嶺(3年)が右中間に落ちる二塁打を放つと、三番寺本聖一(3年)がレフトに運んで続く。一死一、三塁になったところで、打席に入るのは準決勝で二本の二塁打を打ち、実力を見せた主将の真鍋駿(3年)。
カウントが浅いうちに綺麗にライトへ犠牲フライを決め、如水館の先発マウンドを任された背番号18の橘高隼(3年)を攻め立てる。先制点を取られて動揺したのか、橘高は直後の五番、杉山祐季(3年)に四球を与え、六番の山路祥都(3年)にセンター前にはじき返されて追加点も許してしまう。この試合の主導権はあっさりと広島商業が握った。
すぐにでも追いつきたい如水館だが、広島商業の先発の中岡大河(3年)の癖球を思うようにとらえられない。直球に狙いを絞ってもかすかに沈んだり横に逃げたりと縦横無尽の癖球がそれを許さない。如水館は追加点どころかヒットを打つことさえままならない展開が続く。逆に広島商業は三回にも追加点、またしても水岡がヒットで出塁し得点の足掛かりをつくると、そこから寺本が二打席連続でヒットを放ってチャンスメイク。俊足の水岡が三塁を陥れ、真鍋の前に得点へのおぜん立てを済ませた。これを真鍋、またしても犠牲フライでいただき、三点目を奪取する。五番杉山もヒットエンドラン崩れのフィルダースチョイスになり、一死一、二塁。初回に打点を挙げた山路が打席に入り、センターを超えようかという大飛球を放った。如水館のセンター、濱谷晃太郎(3年)は背走の末追いつくところだったが、あと一歩及ばず結局この回までに5点を許し、先発の橘高は試合を作れずマウンドを降りた。
優勝杯を受け取る山路、左は主将の真鍋
それにしても、この試合の見どころは、広島商業先発の中岡の投球に尽きる。なんと七回3分の2を無失点どころか無安打無四球と完璧な投球を披露し、如水館の各打者を寄せ付けない。高めの甘い球と見た打者が打ち損じて凡打を連発、得点への足掛かりすら掴ませなかった。それでも七回に、二番の尾崎が初めて癖球をまともにとらえ、ファーストの頭を超えるライナーで、三塁打を放つなどの意地も見せたが、そこ以上にいけない。八回にようやく1点を返したものの、そこまでだった。
中岡は九回にピッチャーライナーが危うくかすめ、一死一、三塁のピンチもあったが九回を完投。球数83球とまさしく打たせて取る投球術を披露した。広島商業の守りはまさしく鉄壁だった。特にセカンドを守る北田勇翔(3年)の守備は特筆に値する。この試合、中岡の三振はたった1つ。一番打球が飛んだセカンドを守った北田は八回の守備機会を無難にこなし上げ、最後の打者である如水館六番の井口友貴(3年)の一二塁間を抜けようかという当たりも身を挺して止めてアウトにするなど、守備の中心である二塁手の役目を果たした。
結局5対1というスコアで広島商業に軍配が上がり、広島商業は平成16年以来となる優勝杯を勝ち取った。大正時代からの名門校が平成最後の大会で祝杯をいただく栄光に浴せたのは、基本を怠らないことももちろんのこと、新しい高校野球の先駆けとなるかもしれない機動力を磨いたからだと思う。事実、広島商業はこの試合、ヒットエンドランや盗塁などを複数回仕掛け、投手に対する重圧をかけるのに余念がなかった。如水館も、3人の投手を投入し、最後にマウンドに立ったエースナンバーの藤原睦飛(3年)の好投で三回以降の追加点を許さなかった。お互い最後まであきらめない精神を見せてくれた試合だったが、点差以上に紙一重の実力差しかなかったのだろうと思わせる試合だった。
(取材・写真=編集部)