西日本短大附vs興南
試合ごとに成長した西日本短大附が65季ぶりの優勝
宮城大弥(興南)
春の九州頂上決戦は西日本短大附と興南の対戦。どちらも準決勝でセンバツ出場校に勝っての決勝戦だった。
初回、西日本短大附は二死二三塁で5番・高浪光太(3年)のライト前タイムリーで先制する。
その裏、興南は一死二三塁で4番・宮城大弥(3年)のセカンドゴロで同点に追いついた。
2回表、西日本短大附は1番・近藤大樹主将(3年)のセンター前タイムリーで勝ち越す。4回にも二死満塁のチャンスを作ると、1番・近藤が走者一掃の左中間二塁打を放った。
投げては先発の右腕・江崎陸(3年)が12安打されながらも2回以降は本塁を踏ませず、攻守に粘り強さを発揮した。
「1試合ごとに選手が成長してくれました」。
西日本短大附の西村慎太郎監督は開口一番で選手の成長を称えた。6安打で5点を奪うそつない攻め、12安打されながら1失点で切り抜けた守備、攻守ががっちりまとまって接戦を勝ち抜いたその総仕上げのような決勝戦だった。
何よりの成長とリーダーシップを発揮したのが近藤主将だ。プロも注目する興南の好左腕・宮城からチームは14奪三振を喫しながら、3安打4打点の活躍で勝利に導いた。
「前の晩から準備ができていたので、あとは何も考えずに振るだけでした」と近藤主将。宮城とはU15日本代表でチームメートだったこともあり、そのすごさは身に染みている。前夜から一番速い球に振り負けないようにイメージしてひたすらバットを振り、迷いなく打席に立つことができた。
打席では指3本分バットを短く持ち、ノーステップで振り抜いた。勝ち越しと走者一掃の二塁打はいずれも狙い通り直球を弾き返したものだった。「宮城君との対戦が近藤の力を引き出してくれた」と西村監督。今大会序盤は調子が上がらなかったが、ここぞという大舞台で、好敵手を相手に力を発揮できるところにスター性を感じた。
先発の江崎陸(西日本短大附)
近藤VS宮城の対決に注目が集まりがちだが、右腕・江崎を中心に1失点でしのいだ守備も見事だった。「秋は打ち勝つチームだったが、この春の県大会からは守備で粘れるチームになった」と西村監督。江崎もヒットは打たれるが、ジャストミートされる打球は少ない。三振を取れる力強さはないが、角度のある低めのボールと制球力、捕手・神宮隆太(3年)の好リードで打たせてとる。2併殺をとったように、野手もたとえ打たれて走者が出ても守り抜ける信頼関係がこの春の大会を通じて出来上がってきた。
「どんな相手でも気持ちを込めて投げる江崎の姿を見ていると、自分たちも守ってやろうという気持ちになる」と遊撃手・近藤は言う。「いろんな試合を経験して自信がついた。この経験に満足することなく、夏はもっと成長したい」と経験と自信を積むことができた春に夏への手応えを感じていた。
(文=政 純一郎)