大分vs福岡大大濠
「11対10で打ち勝つ」 好投手複数擁する福岡大大濠相手に実現
3試合連続本塁打の星子海勢(福岡大大濠)
「うちは11対10で勝つゲームを目指しています」
2回戦の小林西戦(試合レポート)の勝利後、そう語った大分の松尾監督。まさか次の試合で実現するとはだれが予想しただろうか。140キロを超える投手が3人擁する福岡大大濠相手に実現したのだ。そんな激戦を振り返っていきたい。
打撃戦の幕開けはこの男の一発から始まった。
1回表、福岡大大濠は二死三塁から4番星子海勢の2ランで先制。甘く入ったスライダーを逃さなかった。3試合連続でこれで通算42号。まさに勢いに乗っている。
しかし1回裏、満塁のチャンスから5番飯塚和茂が福岡大大濠の先発・深浦幹也の外角直球を逃さず、右中間を破る適時三塁打で逆転に成功した。
2回表、福岡大大濠は2番山城の適時打ですかさず同点に追いつくと、5回表には敵失、さらに8番新井 廉人の適時打で5点目。
6回表には3番深浦がライトへ本塁打を放ち、6対3と突き放した。大分としては良くない流れであったが、この男が試合の流れを取り戻した。ここまで不調に苦しんでいた中尾拓士だった。ストレートを振り抜くとライナー性でライトスタンドに飛び込む同点3ラン。
松尾監督も「この一発が大きかった」と振り返るように、失策で失点を与えるなど嫌な流れだった大分にとっては勇気を与える一発だった。
2本目の本塁打を放った中尾拓士(大分)
ここからは取られたら取り返す試合展開に。7回表、福岡大大濠の7番宮本の適時打で勝ち越すが、7回裏、大分は9番小野の左前適時打で同点に追いつく。ここで福岡大大濠は背番号1の山下 舜平大を投入してピンチをしのぐ。
8回表、福岡大大濠は5番・溝田 翔が左中間に飛び込む3ランを放ち、大きく勝ち越したが、8回裏、中尾がストレートを捉え2打席連続弾。
「調子は最悪だったので狙い球云々というよりとにかくくらいつくだけでした」
この試合で高校通算18号、19号。まさに吹っ切れたような当たりだった。捕手の江川侑斗は「去年の秋にも中尾はこういう2連発を打ったことがあるのですが、まさに今日はそれに近く、ゾーンに入っていましたね」と興奮気味に語った。
10対9のまま迎えた9回裏。一死から9番小野が左前安打を放ち、1番江川は「とにかくくらいつくだけでした」と振り抜いた打球はライトフェンス直撃の適時三塁打となり同点。そして2番・田中 颯悟が右前適時打を放ち、11対10で逆転サヨナラ。140キロ台の好投手が揃う福岡大大濠投手陣相手にこのサヨナラ劇は大きい。
サヨナラ打の田中颯悟(大分)
明豊など好投手が揃う大分で勝ち抜くには打ち勝つ試合展開が必要になる。そういう意味でこの勝利の価値の大きさはとてつもないものがある。
松尾監督は「こういう投手たちから打つために練習をしてきましたから。子供たちは懸命に練習していましたから。それが出たと思います」と選手たちを労った。
次は世代屈指の左腕・宮城大弥擁する興南。打線の状態も上がっている興南相手ということでこの試合も苦戦になるに違いない。だが宮城も飲み込む強打を見せることはできるのか。
(文・写真=河嶋 宗一)