福岡大大濠vs球磨工
福岡大大濠、強力な投手陣が今回も冴え渡る!最後は星子が第41号決勝弾!
先発の山下 舜平大(福岡大大濠)
本当に福岡3位なのかと思わせる戦いを見せる福岡大大濠。球磨工相手にも改めて選手層の厚さを示した一戦だった。
福岡大大濠の先発マウンドに登ったのは山下 舜平大(しゅんぺいた・2年・右投げ右打ち・186センチ80キロ)と恵まれた体格をした大型右腕だ。ゆったりとしたテークバックから振り下ろすストレートは常時140キロ~143キロを計測。とにかく角度があり、「自分自身、身長もあり、他の人にはない特長だからこそ角度あるストレートを磨いてきました」と語るように、指にかかったときのストレートは素晴らしいものがあった。
ただ飛ばしすぎなところをベンチから指摘されてからは135キロ~140キロの速球、100キロ台のカーブのコンビネーション。球種を限定しているのはあえてだそう。縦回転で頭が突っ込まない投球フォームをしているので、無駄に横降りになるようなフォームを促す球種を習得するよりも良いと思う。
見ていて濱地真澄(阪神)を思い出した。ただ八木監督は「素材はそれに並ぶ可能性は持っています。ただ濱地と比べると観察力がないですね。濱地は相手を見てピッチングができる観察力がありました。山下は目の前のことで精いっぱいなので、少しずつ駆け引きを学んでいる段階ですね」
確かに性格はおとなしく、捕手・星子海勢からも「優しすぎるので、こちらから引っ張っていかないといけない」と声を何度もかける場面もあった。山下は粘り強く投げ続け、併殺崩れで1点を失うが、その後は粘り強い投球で1点に抑える。
一方、球磨工の先発・田山 裕輝もよかった。縦回転で投げられる投球フォームから繰り出す常時130キロ~136キロの直球は回転数が高く、120キロ前後のスライダー、100キロ前後のカーブもよく、両サイドへのコントロールも安定している。高い制球力の秘密として田山はどういう軌道を投げるのか、イメージしているという。5回裏に深浦幹也に適時打を浴びるが、5回1失点の好投を見せた。
星子 海勢(福岡大大濠)
その後、9回まで決着がつかず、延長10回表、4番星子海勢が甘く入ったスライダーを捉え、勝ち越しの本塁打。これで高校通算41号本塁打となった。八木監督は「県大会では打撃が小さくなっていたので、しっかりと大きくとって、タイミングを取ることを意識しなさいと話しました」というアドバイスから復調の兆しを見せた星子。今年に入って練習試合含めて9本目の本塁打。県大会前の愛媛小松戦で3打席連続本塁打を打ったこともあったが、その後、不調に苦しんでいたという。星子は甘く入ったボールは見逃さないし、何よりコンタクト力が高いこと。そして守備では投手に対する声掛けもよい。八木監督は「ゲームキャプテンですから、いろいろな投手をリードしていかないといけませんので、そういう意味では彼には大きな信頼をしています」と全面的に任せているという。
長打力もあり、捕手らしいクレバーさもあり、快活な性格であり、高いステージで活躍ができる捕手だといえるだろう。
その後、7番宮本 光志朗の適時二塁打、9番白石 琉大朗の適時二塁打、1番杉村 星空の適時打で5対1と突き放すと、10回裏は星野 恒太朗が好投。元ホークスの星野順治投手の息子である。星野は「ストレートに角度、回転数、キレを求めています」と語るように縦回転を意識した投球フォーム。常時140キロ~143キロのストレートは回転数が高く、ミットに突き刺さる勢いがある。120キロ前後のスライダー、100キロ台のカーブを投げて2回無失点の投球。短いイニングでの登板は増えていて、2年生の山下、深浦が好投している中、「負けられない気持ちになりました」と刺激を受けた星野は打ち取るたびに声をあげる。
「声を上げることで気持ちを高めていきます」
緊張感のあるマウンドで声を出すことで自分のピッチングに専念する。クローザーらしい思考かもしれない。2イニングを無失点に抑え、準々決勝進出を果たした。
福岡大大濠は140キロ越えが3人いて、さらに強打者で捕手らしい配慮がある星子がいて、各野手のレベルも高い。さらに筑陽学園、初戦を突破した真颯館、西日本短大附などがいる中でも福岡大大濠のバッテリーの力量は福岡を飛び越えて、全国でもトップクラスではないだろうか。
(文・写真=河嶋 宗一)