加藤学園vs常葉橘
昨秋の口惜しさをバネに一冬超えた加藤学園、悲願の東海大会進出
最後までリズムを崩すことなく完封した加藤学園・肥沼君
先日の準々決勝で常葉大系列校同士の対戦を制して進出してきた常葉橘。2009(平成21)年と10年、12年の3度の甲子園出場を果たしている。平成後半になって台頭してきた新鋭校とも言えるが、現在は静岡県を引っ張る存在の一つとも言える強豪校だ。
対する加藤学園は、昨秋はベスト4に進出しながら準決勝、3位決定戦で敗れて東海地区大会進出を逃した。その悔しさをバネにして、あと一つを詰めるために、冬の練習は徹底して厳しく取り組んできた。だからこそ、今大会は何とかして次のステージへの切符を掴みたいところである。一次予選の東部地区大会も1位通過で、県大会もここまで好調に勝ち上がってきており公式戦8連勝でチーム力は上がっている。
初回、相手の攻撃を3人で抑えた加藤学園はその裏、一死から藤田君が中前打で出ると盗塁後、連続四死球で満塁。二死となってから、相手失策で1点を先制する。
3回にも加藤学園は2番藤田君が四球で出塁するとすかさず盗塁。きっちりバントで送って一死三塁を作ると、ゴロGO戦術は、内野悪送球を誘発して追加点を挙げた。さらに、二死三塁となったところで、四球捕逸で追加点が入る。加藤学園の積極的な走塁が、相手にプレッシャーを与えていたとも言えようか。
そして4回にも加藤学園は、9番杉山君がセンター横に二塁打すると、内野ゴロで三塁に進み、またしても2番藤田君の中前打で追加点を挙げた。この日の藤田君はここまで、ことごとく得点に絡んでいく活躍である。
何とか反撃したい常葉橘は6回、1番からの好打順で栗田君、藤本君が連続安打して絶好の反撃機を迎える。しかし、肥沼君は冷静な投球で、一死一三塁から、内野ゴロ併殺で切り抜ける。二塁手大村君の好判断も光ったプレーだった。
常葉大橘・芦沢翼君
6回から常葉橘の片平恭兵監督は芦沢君に代えて市川君をマウンドに送った。市川君はストレートが140キロ超の速球投手として注目されている。しかし、この日はやや制球に不安定さを垣間見せて、2四球で二死二三塁としてしまう。ここで、加藤学園は3番川上君が144キロのストレートを中前へはじき返して2者を迎え入れるタイムリー打で突き放した。
6点差で精神的にも楽になった肥沼君は7回、8回もしっかりと抑えていった。そしてその裏には1番林口君からの打順で、二塁打して送りバントは失敗したものの、相手失策に乗じて得点して加藤学園としては、春は初めてとなる東海大会進出を8回コールドゲームで決めた。
加藤学園の米山学監督は、「とにかく中途半端なことはしないように、白か黒かはっきりした野球をしていきたい」という思いを掲げているが、そんな姿勢が積極的な走塁などいい方に表れたと言っていいであろう。
「昨秋からの成長という点で言えば、精神的な部分が一番大きいでしょう。こういう緊張感の中で試合が出来て、日替わりヒーローが出ていくというのもウチの野球です。私の役割としては、選手たちがやりやすいように背中を押してあげることです」と、チームの快進撃を喜んでいた。
今春センバツ出場を果たした津田学園の佐川竜朗監督とは同期ということもあり定番の練習試合も組んでおり、交流が深いという。その津田学園は先の三重県大会で優勝を果たして東海地区大会に進出を決めている。今大会で加藤学園も、ついに同じ土俵にたどり着けた。
2016(平成28)年に東海地区大会をも制した時以来の春季大会優勝を狙った常葉橘だったが、序盤に守りのミスが相次いでの失点が尾を引く形となってしまった。
片平監督は、「不甲斐ない試合をしてしまいました。ここまでくると、力はそれ程変わらないと思います。それだけに、こうした守りでのミスが出ると、こんな試合になってしまいます。本来、ウチとしては投手を含めて守りのチームと言うつもりなんですけれども、勝ちたいという思いからの緊張もあったんでしょうか。夏までにもう一度、整理し直さなくてはいけないことがいっぱい見つかりました」と、この敗戦を糧として先を見据えていた。
安打数だけで言えば、加藤学園6に対して常葉橘7。しかしスコアは、加藤学園の7対0。改めて失策が大きく試合展開に影響を及ぼしたということを示す数字となった。
(文=手束 仁)