試合レポート

大宮東vs川越西

2018.07.07

若い大宮東を救った3年生達

 

 前日から心配されていた雨も上がり、100回記念大会となる今大会の開会式も無事に終了する。直後の開幕ゲームはいきなり大宮東川越西という3,4回戦でもおかしくない好カードとなった。試合は予想に違わぬ好ゲームとなった。

 

 まず、昨秋、今春と結果が振るわず今大会ノーシードで迎える大宮東は、チームをドラスティックに若いチームへと切り替えた。何と先発メンバー9人中7人が1,2年生である。昨秋4番を打っていた数少ない3年生である主砲・上久保諒哉(3年)を1番に置き、3,4番には1年生の小河原凱(1年)、石塚晴樹(1年)を据えた。彼らは共に180cm近い身長で90kgと体は既に出来上がっている。おそらく河西監督は怖いものなしで大会に臨める有望な1年生にかけたのであろうが、計算はできない。かなりギャンブルに近い布陣だ。

 

 一方の川越西も2年生が4人いるが、こちらは昨夏の経験者が多い。試合は案の定中盤まで川越西のペースで進んだ。

 

 先発は川越西がサイドスローの小野寺堅(3年)、一方の大宮東はMAX130km後半の直球が武器の島村大樹(2年)と両エースが登板し試合が始まる。

 

 じゃんけんで勝って先攻を選んだ川越西は初回、大宮東・島村の立ち上がりを攻め立て、先頭の原田蓮(2年)が初球を捉えライト前ヒットを放つと、続く大江歩夢(3年)がこれまた初球できっちりと送り2球で一死二塁とする。二死後、4番・渡辺壮太(3年)がセンター前タイムリーを放ち川越西があっという間に1点を先制する。

 

 対する大宮東もその裏、川越西・小野寺の立ち上がりを攻め、先頭の上久保がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く中澤海斗(3年)がきっちりと送り一死二塁とし、川越西と全く同じ形を作る。だが、頼みの3番・小河原、4番・石塚は緊張もあったか凡退し無得点に終わる。

 

 2回以降立ち直り、打たせて取るピッチングで大宮東打線にチャンスらしいチャンスを与えない小野寺に対し、島村はその後も苦しい投球が続く。

 

 3回表、川越西はこの回先頭の齊藤圭佑(2年)がセーフティーバントを決めると、続く原田のボテボテのセカンドゴロで一走・齋藤は二進し一死二塁とする。齋藤はさらに2番・大江のショートゴロの間に三塁へ進むと、続く森拓真(2年)が四球を選び二死一、三塁とチャンスを広げ4番・渡辺を迎える。すると、川越西ベンチは渡辺が追い込まれた所で今度はダブルスチールを試みる。微妙な判定であったが、投球がストライクとなったためそこで攻撃は終了したが、このあたりから川越西が若い大宮東の内野陣に対し積極的に仕掛け始める。


 

 川越西は4回表も一死から1番・原田のライトフライをライトが捕れず原田は二塁へと進むと、続く井原飛翔(3年)もレフト前ヒットを放ち一死一、三塁とチャンスが広がる。8番・小野寺の所で川越西ベンチは2ボールから一走とのエンドランを仕掛けるがこれがファールとなると、2ボール1ストライクから今度はダブルスチールを仕掛ける。だが、挟殺間に三走が気になったファースト小河原は一走の二塁進塁を許し一死二、三塁としてしまう。小野寺も結局四球を選び一死満塁とチャンスは広がったのだが、続く齊藤の所でサインミスが生じる。2ボール1ストライクから一走だけが飛び出し追い込まれていた齋藤はボール球を空振り三振に倒れ、一走・小野寺も挟殺で刺されてしまう。絶好の勝ち越し機を何とももったいない形で逸した川越西はこの回無得点に終わる。

 

 

 すると、流れはやや大宮東へ傾き始める。4回あたりから落ちる球に活路を見出し始めた島村はその後の川越西打線を徐々に抑え始めると、今度は大宮東ベンチが動く。

 

 

 6回裏、この回の先頭打者に代打・昨秋1番を打っていた3年生都筑桃太(3年)を送る。都筑は期待に応えレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く小河原の所で大宮東ベンチはエンドランを仕掛ける。結果はセカンドゴロとなり一死二塁と走者を進めると、4番・1年生石塚の所に代打・昨秋レギュラーであった3年生の山本絢斗(3年)を送る。ここで山本も期待に応えレフト線へタイムリー二塁打を放ち1対1の同点とする。

 

 

 一方、同点に追いつかれた川越西も7回表すぐに反撃を開始する。この回先頭の小野寺が浅い守備位置であったライトの頭上を越える三塁打を放ち無死三塁とこれ以上ない勝ち越しのチャンスを迎える。ここまでのこともあり、川越西ベンチは強攻策を取るが、大宮東・島村の踏ん張りに遭い後続が凡退しまたしても一本が出ず無得点に終わる。

 

 

 すると、8回裏大宮東は一死から4番・山本がショートゴロエラーで出塁すると、続く鈴木琉聖(2年)の所でエンドランを仕掛ける。打球はファーストへの強いゴロとなるが、ファーストがファンブルする間に一走・山本は一気に三塁を陥れる好走塁を見せ二死三塁とする。ここで、6番・島村がレフト前へ貴重なタイムリーを放ちついに2対1と逆転に成功する。

 

 

 島村が最終回もきっちりと抑えた大宮東が何とか川越西を振り切り2回戦へ駒を進めた。

 


 

 まず、川越西だが、エース小野寺は持ち味である打たせて取る投球で終始ポテンシャルの高い大宮東打線を封じてみせた。特に右打者の外角へのストレートをバックドア(左打者の内角へのストレートをフロントドア)気味に変化させるボールが良く、そのボールを中心にシンカーやスライダーをコーナーに投げ分け最後まで丁寧に投げる投球は称賛に値する。悔やむべくは、3回表はまだしも4回表の一死満塁、7回表の無死三塁のチャンスで1点をもぎ取ることができなかったことであろう。ここで1点でも奪えていたら十分勝てる展開であっただけに悔しい敗戦であろう。幸い主力に2年生が4人残るチーム編成であるだけに、新チームでは原田などを中心とし、1点を奪う野球をテーマに取り組んで欲しい。

 

 

 一方の大宮東は、最後は都筑、山本など3年生の力で何とか逆転したが、決して褒められる内容ではなかった。2年生エース島村は昨秋からの主戦であり経験豊富でこの試合も好投したが、やはりいきなり1年生2人を3,4番に据えるのはやや荷が重い印象を受けた。もちろんポテンシャルは申し分ないのだが、夏の大会は独特な雰囲気があり、プレッシャーのかかる場面でその雰囲気に飲まれ力を出せない1年生を何度となく見てきた。もちろん若いチームは勢いに乗ると上級生以上にイケイケになる可能性もあり、この経験は秋以降には必ず生きるのだが、それも勝ち上がってこその経験だ。次戦以降は相手を見ての起用が望ましいかと思われる。”夏は3年生”というまるで格言のような言葉をよく耳にするが、皮肉にもその言葉がぴったりと当てはまる試合であった。

 

(文=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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