健大高崎vs前橋商
序盤から大乱戦の展開は、最後は健大高崎がねじ伏せる
ホームランを放った山下航汰選手(健大高崎)
絶好の野球日和と言ってもいい好天の下、どちらも0のイニングは9回だけというすさまじい試合が展開された。前橋商の先輩後輩監督対決となった準々決勝。健大高崎の青栁博文監督が前橋商の住吉信篤監督の2年上という関係である。二人は、家も近く普段も仲がいいという間柄だが勝負は別物である。
試合はいきなり動き出す。初回、健大高崎は先頭の山下君が四球で出ると、暴投とバントで三塁へ進み、3番大越君の中越二塁打であっさりと先制。さらに、一塁ゴロで一三塁となって、6番大柿君の三遊間を破るタイムリー打でこの回2点が入った。
しかしその裏、前橋商もすぐに反撃する。健大高崎の先発栁澤君の制球不安につけ込んで連続四球で一二塁とすると、3番吉田晃哉君が左中間に二塁打して2者が帰り、たちまち同点となる。さらに四死球が重なって、押し出しで3点目が入って前橋商が逆転となった。さらに満塁から、9番井上君が中前へはじき返して2者を帰して5点目。健大高崎青栁監督は、たまらず、栁澤君を降ろして久保田君を送り出し、何とかその後を抑えて表と裏だけで40分近くかかった攻防はようやく次の回へ進んだ。
しかし2回にも健大高崎が一死一二塁から、小林大介君の二塁打と、暴投もあって2点を返して1点差とする。こうして、序盤から激しい点の取り合いとなった。
3回から前橋商のマウンドも井上君が退いて、星野君が登った。もう一度流れを呼び戻したい前橋商だったが、先頭には安打を許したものの、後続を何とか切って0に抑える。そしてその裏、前橋商は7番神道(じんどう)君が左翼席へソロ本塁打を叩き込むと、一死後星野君と都丸君の連打でチャンスを作り、2番中嶋君が右中間二塁打してこの回2点を追加した。
ところが試合はまだまだ落ち着かない。4回の健大高崎は一死から連続四球で一二塁とすると、4番高山君が左越二塁打して1点を返し、なおも一死二三塁。ここで5番享保君が中前打してついに同点となる。さらに、大柿君がこの日自身3本目の安打を放って一三塁になると暴投があって逆転し、内野ゴロ悪送球もあって、5点目が入り、なおも一死三塁。健大高崎は、とにかく走っているので、少しでも送球がそれると確実に余分に塁を奪っていく。このあたりの持ち味は変わっていない。
その後に、スクイズ失敗はあったものの、「何かやってくるぞ、スキを見せたらつけ込まれる」という警戒心を相手に与えていきプレッシャーをかけていっていることは確かだ。こうして、4回にビッグイニングを作り返して健大高崎が9対7とひっくり返した。
前橋商ナイン
健大高崎はさらに、5回には先頭の1番山下君が特大の本塁打を右翼場外に放ってリードを広げた。
しかし前橋商もそのままでは引き下がらなかった。ようやく試合が落ち着きかかったかなという気配になってきたかと思われた6回、前橋商は吉田晃哉君の二塁打と死球で無死一二塁となったところで、5番戸塚君が右翼へ3ランを放って再び同点に追いつく。さらに、前橋商は吉田蓮君も安打で、なおも無死一塁と畳みかけるチャンスだったが、その後を抑え込まれた。試合後、住吉監督もここで、逆転しきれなかったことを一番悔いていた。「あそこで追加点を与えない健大高崎の強さ、取り切れないウチの弱さ、その差が最終的には出てしまった」
何とか同点止まりとした健大高崎は7回、先頭の代打嶋本君が四球で出ると、山下君が中前打で続く。さらに四球で無死満塁。大越君が一二塁間を破って再度健大高崎がリードする。そして、高山君は併殺となったが、その間に三塁走者が帰ってこの回2点。そして、8回にも健大高崎は二死一二塁から山下君が右中間二塁打して決定的な13点目を奪った。住吉監督は、「試合の展開上、併殺の間の1点は仕方がなかったのですが、8回の1点が効きました」と残念がり、「これで、何度健大高崎にやられたことか」と悔やんでいた。
健大高崎の青栁監督は、「ここ何年かのチームの中でも、打撃力は一番いい。本塁打も、トータルで200本以上打っているし、上から下まで打てるので、とにかく課題は投手陣。その課題が浮き彫りになった」と、何とか乱打戦を制しながらも冷静に振り返っていた。
(文・写真=手束仁)