天白vs旭丘
好左腕の投げ合いは延長13回、最後は天白が粘り勝ち
本塁打の櫻木君を笑顔で迎える天白ベンチ
1年2年生でわずか13人という少人数ながら、この秋は県大会で3回戦まで進出した旭丘。かつての愛知一中の流れを汲む伝統校で、県を代表する進学校でもあり、一躍21世紀枠の推薦校に推す声も多いが、その原動力となっているのが左腕小松 健太郎君だ。
これに対して天白も好左腕の岡本 朋大君かいる。この、両左腕が力を出し合う投げ合いの好投手戦となった。
小松君はストレートのスピードを速く見せる意味もあって、タテの大きなスローカーブを駆使していたがそれが有効だった。特に、この日は意識して多く使っていたようだが、それが功を奏していた。空振りを獲れるのも大きい。岡本君は、同じタテの変化でも、曲がりは少ないが鋭くキュッと入っていくスライダーで、打者としては打ちづらい。そんな二人の投げ合いという感じで試合が進んでいった。
先制したのは旭丘で2回、四球の走者を一塁に置いて、5番前川君が三塁ベース上を抜いていく二塁打で二三塁。六番佐野君の二塁打で三塁走者が帰る。さらに、暴投もあって、この回2点が入った。旭丘は、決して打線が強力というのではないだけに、貰った形の2点は大きかった。もっとも、試合としては序盤であり、そのまま逃げ切るにはさすがに小松君としても荷が重いかもしれない。
案の定、直後の3回に天白は1番の櫻木君が右翼席へ会心のソロ本塁打を打ち込む。打った瞬間にガッツポーズを示すくらいに感触がよかったのだろう。見事な一打だった。畳みかけたい天白は、続く野崎君も中前打して一気に小松君に襲い掛かったが、ここから小松君も粘りを発揮して、盗塁と四球は与えたものの、併殺で危機を免れた。
しかし、旭丘打線も決定力を欠いており、なかなか追加点が奪えない状況が続いていた。そんな中で7回、天白は先頭の8番岡本君が右翼線二塁打すると、バントで進んで二死三塁から、相手失策があって同点に追いつく。
こうして試合は延長に突入していくが、小松君も8回からは12回まで3人ずつでしっかりと押さえており、むしろ前半よりも調子がよくなってきたのではないかと思わせるものだった。無理して三振を奪いに行くというよりは、上手に引っ掛けさせて打たせていくというスタイルでもある。
ただ、旭丘打線は8回以降は毎回のように安打が出るものの、単発でその後が続いていかない苦しさで打線がつながっていかないなという印象でもあった。
試合展開としては、延長が長く続いていきそうな雰囲気でもあった。「果たしてどうやって点が入るのだろうか」という気になってきた13回、天白は先頭の2番野崎君が6イニングぶりの安打となる右線二塁打を放つ。一死後連続四球で満塁となって、山田君の三塁ゴロの間に三塁走者が帰ってこれが決勝点となった。本塁で刺したい旭丘の三塁手山本君だったが、一瞬ジャックルして本塁送球が間に合わなかったが、試合後はそのことを悔やんで涙を流していた。記録上では失策とはならないが、本人にとっては本塁で刺さなければいけなかったという思いが強かったのであろう。その悔しさがこの冬の自身の強化目標にもなっていくのだろう。
試合としては、最後まで緊迫感があって好ゲームだった。
「苦しい場面も何度か凌げたんですけれども、やはり打てないかったことが勝ちきれない原因でした」と、旭丘の中埜佳穂監督は、延長戦となった試合で最後に失点したことを悔いていた。
(文=手束 仁)
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