東邦vs桜丘

西有喜（東邦）

　この秋、愛知県内では最も前評判の高かったのが東邦だ。その予想通りに、ここまで安定した戦い方できっちりと勝ち上がってきている。森田泰弘監督も、「この大会は優勝したい。優勝して東海大会へ行かなくてはいけない」と、厳しく見つめている。それだけに意識も高く持っているということである。

　その東邦にぶつかる愛知桜丘は、昨年秋に続いての、東海地区大会進出を果たしたいところである。今年の秋の新チームも、投手力が安定しているという評判で東三河を勝ち上がってきた。

　東邦は背番号10の西有喜君、愛知桜丘は背番号11の左腕スリークォーター小林拳誠君が先発。ある程度の打ち合いが予想されたが、試合はそんな予想に反して、両投手の投げ合うという形になった。

　愛知桜丘が初回に、2番吉野弘晃君の右翼へのソロ本塁打で1点を先取するが、この1点が思いのほか重く、前半は結局この得点のみだった。東邦は、5回まではわずかに2安打。愛知桜丘も、安打こそ毎回放つものの、あと一本が出せず、そのまま1対0で後半に突入していった。

　膠着しかかった試合を動かしたのは東邦だった。5回の攻撃で代打を送ったことで、その裏のマウンドからエースナンバーを背負った扇谷莉君が登板した。扇谷君は二死から、四球や安打を許すものの何とか0で切り抜ける。

　そして迎えた6回、東邦は二死走者なしから6番反頭君が安打で出ると死球と四球で満塁とした後、9番に入っていた扇谷君が右中間に二塁打して、満塁の走者一掃となり一気に逆転した。

　東邦はさらに、7回にも安打で出塁した林君を二塁へ進めて二死となってから、梅田昂希君が右越に大きな本塁打を放って2点を追加する。これで、試合の流れそのものは東邦に傾いていった。

　しかし、愛知桜丘も決して委縮してはいなかった。ベンチではむしろ、「ゲームが楽しくなってきたんじゃないか、試合が動き出したんだ。相手だけが動いているから、自分たちも動かしていこう」と、声を掛けあい、8回にはその言葉通りに反撃。

　一死から、3番小柳津君が失策で出塁すると、大津君も続いてさらに四球もあって満塁。ここで6番小林亮大君が中犠飛を放ち、さらには丸山蓮君も右前へタイムリー打して2点差と追い上げた。「東邦のエース扇谷君から奪ったことも大きかった」と、愛知桜丘の杉澤哲監督は、試合後にはこの得点を評価していた。

　さらに、9回にも、得点こそならなかったものの、2安打を放ち、二死一、二塁で4番大津君。一発が出たら逆転サヨナラという場面まで追いつめて、東邦をヒヤリとさせた。しかし、最後は東邦の扇谷君が踏ん張って、粘る愛知桜丘を振り切った。

　苦しみながらも決勝進出を果たした東邦。森田監督は、「やっぱり、ちょっと硬くなっいるのでしょうかね。ただ、東海大会を目指していく試合ですから、選手たちには最終的には勝てばいいということは言っていました。まあ、何とか勝てましたから、これで次へ行けますが、優勝して行くのと2位とでは違います」と、辛勝にも、次のさらなる上をしっかりと見つめていた。

　愛知桜丘の杉澤監督は、「毎年、ウチは一人のエースがいて、それを看板として戦っていくというチームでしたが、今年はそれよりは、今日のように力の似た投手をつないでいくという形です。先発の小林拳誠は、行けるところまでと思っていましたが、よく投げました」と、敗れはしたものの、戦い方そのものには納得していた。

（文＝手束 仁）

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