試合レポート

関東一vs堀越

2017.07.17

攻守で荒削りも、最後は強打で圧倒!

 エース・高橋晴取材した時、米澤貴光監督が今年のチームについてこう語った。 「去年のチームよりも能力が高い選手がいます。しかしそれがイコールとして勝てるチームとは限りません。今年は勝ち上がるのに苦労するチームですよ」
それは序盤から都立雪谷堀越といった強豪と対戦するというのも1つの理由だが、チームとしてまだ成熟しておらず、脆さもあることを指摘していた。だが、「エース・高橋を含めて大会を経験としてチームを成長していければと思います」と語った米澤監督。まさに堀越戦は米澤監督の言葉を表した試合となった。

 先制したのは、関東一。1回表、一死から2番小林琢朗(3年)が左越え二塁打。3番増田 哲平(3年)の安打で、一死一、三塁のチャンス。4番石橋が内野安打で1点を先制。さらに5番早坂 秀太(3年)の敵失で3点目。そして6番高橋が右中間を破る適時三塁打で、4対0とした。堀越の先発・高橋隼也は、184センチ83キロと恵まれた体格をした大型右腕。右スリークォーター気味から投げ込む直球は、常時130キロ~136キロ、スライダー、カーブを織り交ぜる。投げるストレートの勢いは悪くなく、コントロールも決して悪い投手ではない。だが、配球が単調で、不用意にストレートを取りに行く傾向がある。それを関東一打線は逃さなかった。そんな投手から一気に4点を取る打撃力があるのだから、やはり関東一打線は脅威。

 まず能力の高さを発揮した関東一だが、2回裏に脆さを見せてしまう。なんと2つの失策が重なり、満塁のピンチを迎える。ここで、エースの高橋は140キロ台の速球を連発。9番高橋に対し、この日最速の145キロを計測し、最後は高めの143キロおストレートで空振り三振。さらに1番野口颯太(3年)に146キロのストレートを投げ込んだが、しかし、145キロのストレートを打たれ、二ゴロ失策。さらに2番内田龍哉(3年)に左前適時打を打たれ、4対2と2点差とされる。

 浮き沈みの激しいところを見せた関東一だが、その後は落ち着いた試合運び。4回表、8番柿澤兼也の安打から一死三塁のチャンスを作り、1番斎藤の右前安打。さらに2番小林の2本目となる右翼線を破る適時二塁打。そして3番増田が右中間を真っ二つに破る三塁打を打ち、7対2。ここで堀越は高橋が降板。右投手の中野 大樹(3年)が登板。さらに4番石橋康太(2年)が痛烈な二ゴロ。増田はゴロゴーを仕掛けており、生還。これで8対2とした。


 高橋は、夏勝ちあがるために、常に10割の力で投げるのではなく、力8分のピッチング。常時135キロ~138キロのストレート、120キロ前後の縦横のスライダー、100キロ前後のカーブを外角中心に集めるピッチング。力みのないピッチングで0を並べたが、6回裏に、神保優貴(3年)に高めに浮いたカーブを打たれ、レフトスタンドへ消えるホームランを打たれ、さらに7回裏には、野口に適時二塁打を打たれ、4失点。ここぞというときにマックスの力を発揮するためにうまく力配分をして、コーナーをついて試合を組み立てていく意志が見え、投球面で成長を見せているが、まだ変化球の使い方に詰めの甘さを残す。

 それでも186センチ87キロと恵まれた体格からマックスの力で投げた145キロ前後のストレートはボリュームたっぷりで、超高校級と実感できるものがあった。投球フォームを見ても、上半身と下半身のバランスが取れたフォーム。勝つ投球をするには、まだまだ突き詰めなければならない点は非常に多いが、米澤監督が「勝つ中で育てる」と語っているように勝ち進むごとに投手としてレベルアップを果たしてほしい。

 追加点を入れたい関東一は連打で無死満塁のチャンスで作る。3番増田の押し出し死球の後、4番石橋が打った瞬間、本塁打と確信したのか、バットを放り投げる。打球はレフトスタンドへ飛び来む満塁本塁打。故障に苦しんできた石橋が復活を印象付ける一打となった。

 どの選手も野手のレベルが高いが、その中で活躍が光ったのが増田。スクエアスタンスで、グリップを肩の位置において背筋を伸ばして構える。スイングスピードの速さはレギュラーの中でも一番ずば抜けており、あっという間に外野の間へ抜ける。もちろん一発を打つ長打力は持っており、走攻守のレベルの高さは随一。最も将来性がある選手といえるだろう。

 高橋、増田、石田など個々のレベルの高さは東東京だけではなく、西東京を加えてもトップクラス。一戦ごと勝ち進むごとに、自分たちの足らないピースを埋めることができるのか。攻守両面で、成熟さが出てきた時、3年連続の東東京制覇は見えてくる。

 (レポート=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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