日本文理vs長野商
継投の難しさ
日本文理 西村勇輝
延長10回サヨナラでベスト4進出を決めた日本文理。大井 道夫監督の「疲れたね・・・」という言葉が勝負の難しさを物語っていた。
9回に逆転して勝った1回戦とは対照的に、この日は前半にリードを奪う展開。エースの西村 勇輝(2年)は5回まで1失点と試合をしっかり作り、6回からは期待の148キロ右腕・鈴木 裕太(1年)がリリーフ。2イニングを1安打とほぼ完璧に抑えていた。
8回の守り。これまでは練習試合も含めて2イニングまでしか投げていなかった鈴木に3イニング目を託した。指揮官に「鈴木でいけます」進言したのはキャッチャーの川村 啓真(2年)だった。「鈴木の前の回が良かった」と進言した理由を話す。だがこういう時に限って勝負の難しさが出てしまう。一死から四球で走者を出すと、長野商の3番・髙野 功二(2年)にライトへ二塁打を浴びる。本塁で走者をタッチアウトにしたものの、完璧に打たれたことが残像として残った。続く4番・林 千太郎(2年)に死球を与えてしまうと、5番・増田 幸之助(2年)に対しては追いこみながらもスライダーを続け、歩かせてしまった。「鈴木の一番良い球である直球ではなく、スライダーを続けてしまった。あそこで流れが変わってしまったと思います」と悔やんだキャッチャー・川村。指揮官は「投手起用(継投)を私が間違えた」と、ここで鈴木を代え、背番号10の稲垣豪人(2年)を三番手として送り出す。それでも変わった流れは簡単には戻らない。タイムリーで1点差まで追い上げられ、9回にはエラーをきっかけにゲームをひっくり返されてしまった。
しかし9回裏、大井監督が「伝統にしたいね」と話す粘りを再び発揮。4番の川村は二死2ストライクと追い込まれながらも同点打を放ち、10回のサヨナラ勝ちへと繋げた。殊勲打の川村は勝負の難しさを感じながらも、勝ったことで次へ向けての成長の機会を手にした。
「北信越で優勝して神宮大会へ行こうとやってきたチーム」と指揮官が話す今年の日本文理
頂点まではあと二つ。そのためには守りの要、キャッチャー・川村の成長が欠かせない。
逆転して、あとストライク一つで勝利という状況から再び追いつかれ、延長でサヨナラ負けに終わった長野商。悔しいはずのエース・和田 直人(2年)だが、「負けたのは悔しいです。でも、星稜と日本文理。とても強い相手と対戦できた」とスッキリとした表情。あとストライク一つで勝利という場面で、日本文理の川村に同点打を浴びた1球は、三振を取りにいこうとした直球だった。「力んでしまって甘くなった。でも、三振を取りにいって打たれたのだから仕方ない」と勝負を楽しんだエースの爽やかな表情が印象的だった。
(写真img94~:佐藤純一)
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