試合レポート

都立昭和vs拓大一

2016.07.13

辛抱しきった昭和が中盤から自力示して逆転逃げ切り

 空は重く垂れこんでいるという状況だったが、それに呼応したわけではないだろうけれども、試合の序盤は何となく重い感じだった。どちらもチャンスを作りかけながらも、あと一本の決定打を欠いたままで、お互いがいささか歯がゆい感じでもあった。

 先制したのは拓大一だった。3回までは毎回先頭打者を出しながらも得点にならなかったのが4回は二死走者なしから連続四球でチャンスをもらうと、8番伊藤亜沙人君の二塁打で先制する。拓大一としては、「よし! 行こうぜ」というところであろう。

 また、都立昭和としては1点で抑えたところで気持ちを切り替えたいのだが、図らずもここでジトジトと降っていた雨でグラウンドが重くなったということで約15分間、グラウンドに砂入れなどの整備のため中断となった。

 結果的には、これで都立昭和は気持ちを切り替えられた。ベンチでは森勇二監督が、少し長いミーティングを行っていた。そして迎えた5回の攻撃、8番井上君は好打が一塁ライナーとなったが、続く富樫君が遊撃内野安打で出塁し、寺島君がしっかりとバントで送る。

 2番田舎君四球後、小谷君が巧みに運んで左翼手頭上を破る二塁打で2者を迎え入れて逆転した。

 これで自分たちの試合の流れを呼び寄せた都立昭和は6回も代打藤具(とうぐ)君が内野安打で出るとバントで進み二死となった後、富樫君の内野安打で一三塁。ここで寺島君と田舎君がいずれも左前へ落とす安打で相次いで得点が入りこの回2点。


 そして、その裏から、森監督は先発の松崎君に代わって中堅手の田舎君をマウンドに送った。田舎君はスピードでは松崎君に劣るが、左腕からゆっくりとしたカーブが特徴で、春季大会はこれで早稲田実打線を抑えて金星に導いている。

 その田舎君だったが、いきなり死球でちょっと動揺したところもあったかもしれない。阿部君にも安打されて無死一二塁となり、バント後に9番西澤君に安打されて1点を返された。それでも、都立昭和は7回には藤具君の左犠飛で、8回は富樫君の二塁打と、わずかなスキを突いた巧みな走塁などで加点した。

 田舎君も、回が進んでいくほどに自分のリズムが出てきたようで、9回は上位打線に対してカーブも有効で3者凡退に退けて4回戦進出を果たした。

 都立昭和はいつも、試合前には森監督がミーティングでハンディのホワイトボードに、「この試合のテーマ」を書いて示すことを恒例としている。

 この日は「自分をほめる→見方もほめる」ということがテーマだったようだが、序盤はやや重い感じだった。それでも、中盤以降は本来の伸び伸び野球というか、「人間万事塞翁が馬」という、なるようになっていくという姿勢、春季大会で早稲田実を倒した時(2016年04月06日観戦レポート)に注目されたモットーが生きたといってもいいのではないだろうか。

 これで都立昭和は4回戦進出となったが、これからはむしろ格上といっていい相手との戦いとなっていく。伸び伸びのチャレンジ野球がはじけていけば、面白い存在になっていかれるのではないだろうか。

 拓大一は先制して、3~8回にも毎回安打して畳みかけられる機会もあったが、何となく交わされていったという印象だったのではないだろうか。

(文=手束仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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