試合レポート

美里工vs宜野座

2016.07.12

 宜野座美里工も、全てを出し切った素晴らしいプレーの数々が光った。

美里工の司令塔松川剛大(まつがわ・ごうた)が足の痛みを我慢している場面や、本塁打を放った宜野座岸本恭里(きしもと・ちかり)が限界を超えて交代せざるを得なかったなど、両軍ナインがギリギリのところで戦っているのがスタンドからでも分かるほど。

 それでも勝利のため、仲間のため、夢のために貪欲に前に進む両軍の姿は最後まで潔く清々しかった。

両軍ともに初回から応酬

 美里工は1回、ヒットで出た浦崎龍平が犠打とセカンドゴロで三塁へ達する。大田浩二が四球で歩くと5番新垣嗣人がライト前へ先制のタイムリーを放つ。続く屋我翔也もライト前へ弾きかえし大田が生還。幸先良く2点を奪った。

 マウンドへ上がったのはエース辺土名海ではなく漢那憲琉(かんな・けんりゅう)。前日の昭薬大附戦でピリッとしなかったことと、沖縄尚学諸見里俊を攻略した宜野座打線を考慮しての左腕温存だったのかもしれない。

 しかし宜野座はその裏、一死から大嶺二千翔にライトオーバーの三塁打が生まれる。ここで続く仲田尚徳がキッチリと犠牲フライを打ち上げ、すかさず1点を返した。やはりこの試合も荒れる!そう思わせるに十分な両軍の応酬だった。


8回裏、宜野座がついに逆転し2点差に!

 美里工は5回、一死から四球を得ると犠打で二塁へ進めると松川がセンター前へ運んで1点を加える。

 しかし宜野座もその裏、一死一・二塁のチャンスを得る。送りバントは美里工野手陣の好プレーで失敗に終わったが3番仲田がライトへ二塁打を放ち1点を加える。

 奥間太一が四球で歩いて満塁となり、次打者の当たりでショートからセカンドへ送るも走者の足が一瞬早くセーフ(記録はフィルダースチョイス)。その間に三塁走者が生還し同点に追い付いた。

 波に乗る宜野座は6回、岸本恭がレフトスタンドへソロアーチを掛けついに逆転。しかし美里工は7回、二死二塁から2番前徳柊亨(まえとく・しゅうと)にタイムリーが生まれ試合を振り出しに戻した。

 いつ果てるともない攻防の応戦は見応えがあり、ナインの活気に満ちたプレーの数々が観衆の胸を打つ。

 過去の幾多の名勝負にも劣らない最高のゲームが繰り広げられていく。

 そして8回裏、宜野座は下位打線で2本のヒットを生み出し一死一・三塁として、ナインとベンチから抜群の信頼を寄せる宜野座のジーター佐久田来樹(さくだ・らいき)へ回す。

 この痺れる場面で期待に応えるのがジーターたる所以。見事センターを襲うタイムリー二塁打を放ち宜野座が1点を加えたのだ。

 その後二死二・三塁として仲田がセンター前へ運んで三塁走者が生還。さらに佐久田も本塁を狙ったが、ここは美里工の完璧な中継プレーでタッグアウト。瀬戸際前での2点差で試合は決まったかに見えた。だがーーー


“逆転の美里工”健在なり!

 ときは遡って2013年選手権沖縄大会準決勝。

 美里工は八重山と対戦。3-0と劣勢だった美里工はまた、7回まで僅か1安打と池村英隆の前に完全におさえられていたが8回に高江洲大夢の3ランホームランを含む打者10人で7安打を集め7点を奪い逆転した。

 その伝統を受け継ぐ現ナインも今年の春、県大会初戦で2-6から9回に4点を奪い、10回に勝ち越してコザを沈めていた。

 ゲームセットまで何が起こるか分からないという美里工の持つ空気感が周囲を包む中、先頭打者が内野安打で出塁することによってそれが破裂したかのようでもあった。

 後続もヒットと死球を得て一死満塁でトップに返す。ここで浦崎がレフト前へ運び1点を加えると続く前徳の打球もセンター前へ。二者が生還しついに逆転したのだ!

 この間、僅か6人で4安打を集め3点を奪う、美里工を象徴する”疾風迅雷”の如き攻撃であった。対する宜野座も粘る。その裏奥間がチーム15安打目となるヒットで出塁すると犠打で二塁へ。

 ピンチヒッターの宮城広輔が打席に立ったその5球目だった。強烈な打球がサードを襲う。抜けた!と思ったが美里工浦崎がキャッチ。そのまま二塁へ転送してゲームセット。

 一瞬で明暗が訪れた感じの宜野座ではあったが、直後両軍ナインへ惜しみない拍手がスタンドから贈られる。試合だから勝敗はつけないといけない。勝ったのは紛れもなく美里工だが、あえて言わせて頂けるなら敗者なき好ゲームと呼びたい、至高の2時間半だった。

(文=當山 雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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