試合レポート

都立片倉vs日大桜丘

2016.07.10

今年は3学年の力を結集!佼成学園が後半で立川国際バッテリーを攻略

  昨秋ベスト8ながらも、春では2回戦で聖パウロ学園に敗れ、シード獲得を逃している。そのため1回戦からの登場となった佼成学園は、まさに3学年の力を結集した戦いを見せてくれた。佼成学園の先発マウンドに登ったのは中村陸人(1年)である。大会前、佼成学園の関係者から聞いても、中村の評判は非常に高かった。実際にブルペンを見ていても、出所が見難く、腕の振りが鋭い。見ていて好投手という印象を抱かせた。

 中村は左腕から投げ込む直球は、常時128キロ~130キロを計測。外角中心に投げ込み、要所で、120キロ近いスライダーをひざ元に投げ込んでくるスタイルだ。コントロールは安定していて、見ていて安心して見られるタイプ。これでさらに球速・球威が出てきて、緩急もうまく使える投手になると、秋以降は勝てる投手になっていく予感をさせた。

 そして1回裏、一死二、三塁のチャンスに1年生4番・平澤飛龍に打席が回った。平澤は調布シニア出身。あの清宮幸太郎の後輩である。その平澤が左前適時打を放ち、2点を先制する。平澤はスクエアスタンスで、背筋を伸ばして構えるが、その姿は好打者という雰囲気を感じさせる。トップに入ってからインパクトまでコンパクトなスイングができていて技術的な完成度は高い。これでもっと強く振れるようになると長打も期待できるだろう。


 幸先よく先制した佼成学園だが、都立立川国際バッテリーの配球に苦しむ。先発の矢部凌太(3年)は、125キロ前後なのだが、90キロ台のスローカーブを織り交ぜる。この配球が嵌り、2回以降は0を重ね、4回表、その矢部を上手くリードする細田和希(3年)が右中間を破る三塁打を放つと矢部の内野ゴロの間に1点を返される。

 中々苦しい試合内容となっていたが、今度は3年生が切り拓く。
 5回裏には一死から3番中嶋瞭(3年)がセンター超え三塁打でチャンスを作ると、番山崎の三塁打で1点を追加。さらに5番川口諒太郎(3年)も痛烈な投手返しとなる中前適時打で4対1。二死満塁となって、9番矢本海星(3年)が右越えとなる適時三塁打で、一気に7対1と点差を広げた。さらに6回裏には一死一、三塁から挟殺プレーの間に、三塁走者が上手く野手のタッチをかいくぐり、セーフ。さらに犠飛で1点を追加し、9対1とする。5回まで振り回す打撃が目立ったが、緩いボールに対しては力まず、無意識にコンパクトなスイングができればよい。後半の佼成学園打線はボールの軌道に合わせて打ち返すことができていた。

 投げては、4回途中から登板した桐生昂汰(2年)が6回まで粘り強い投球で無失点で切り抜けると、さらに7回表からは溝口真矢(2年)の継投リレーで、都立立川国際打線を抑え、コールド勝ちを決めた。
 この日は1年生が中村、平澤に、7番サード・幸田一真がスタメン出場。立ち上がり中村が好投を見せ、平澤は2点適時打、幸田は内野安打1本と勢いある1年生が最初は目立ったが、ここぞというときは3年生が頼もしい活躍を見せた。そして投手では2年生2人が、好リリーフとまさに3学年全体が活躍を見せた試合だった。

 これこそ3学年の力を結集した勝利ではないだろうか。突出した選手はいなくても粘り強い試合運びは勝ち進むごと求められるだろう。後半に見せた打撃姿勢を見せ、そして投手陣も調子を上げていけば…とやはりシード校にとって怖い学校であることは間違いない。

(文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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