桐蔭学園vs平塚学園
やはり死闘となった桐蔭vs平学の一戦!桐蔭が粘る平学を振り切りサヨナラ勝ち!
小川(桐蔭学園)
先週の日曜日で行われていた一戦はノーゲームとなり、今日4月19日(火)に順延となったこの試合。この両校の対決は良く当たる。近年では2013年春の準々決勝、2013年の夏の準決勝、2014年秋の4回戦の対戦が実現しているが、この試合も手に汗握る激戦となった。
先制したのは桐蔭学園。まず1回裏、1番西山の内野安打から2つの内野ゴロの間で二死三塁とすると、4番中の敵失で1点を先制。その後も二死満塁まで追い詰め、7番小川航の中前適時打で2対0。二塁走者も突っ込んだが、これはアウトとなり、2点止まりに終わる。
その後、お互い点が取れない。2点を取られた平塚学園の舘は130キロ弱のストレート、スライダー、カーブを投げ分けるオーソドックスな右投手。コントロールはだんだん持ち直して、低めに集めてしっかりと試合を作っていた。
そして7回から登板した2番手・直井も真っ向から振り下ろすオーバーハンドで、120キロ後半のストレート、緩いカーブを投げ分ける投手で、思い切って腕を振って投げることができるので、桐蔭学園の打者はそれに押された形となって、凡打の山だった。
一方、桐蔭学園の先発・小川隼平は非常に良かった。1年秋から見ている投手だが、この時、球速は125キロ前後だったが、最終学年になって、コンスタントに常時130キロ~135キロ前後を計測。何度も最速135キロを出しており、球威が出てきて、外角へズバッと決まるストレートは思わず唸らされるものがあった。さらに変化球は110キロ前後のツーシーム、スライダーを投げ分け、外角にずばずばと決まる。これは打ち難い実戦派サイドハンド。大きく成長を見せていた姿を見せていて、このまま完封かと思われた。しかし桐蔭学園の終盤以降の攻撃が淡泊だったのもあり、まだ平塚学園はいけるぞという流れになっていた。
9回表、平塚学園は二死から2番芦川が高めのストレートを逃さず、ライトスタンドへ飛び込むホームラン。これで1点差に。桐蔭学園の小川隼はこの本塁打で動揺の色が見え、8回までズバズバ決まっていたコントロールが乱れ、3番北岡が四球で歩くと、4番桑原も安打で続き、代打・中野。中野は詰まりながらも中前安打。緩い打球だったことが幸い、二塁走者の北岡はホームイン。9回二死から同点に追いつく。この同点劇に平学ベンチに大いに沸く、だが小川が後続の打者を抑えて勝ち越しを許さなかった。
同点になり喜ぶ平塚学園ナイン
そして9回裏、エース・高田孝一が登板する。高田は不調と聞いていたが、それを感じさせない気迫がこもったストレート。リリーフということで、全力投球。コンスタントに130キロ後半をたたき出し、最速は140キロを計測。ストレートには角度があって、打者寄りで強く離すことができていて、球速表示以上を感じさせるストレート。不調と聞いていた観客の方は、みな、驚きの表情だった。
体を使って、強く腕が振れるので、鋭角に曲がる110キロ台のスライダーは切れがあり、100キロ台のカーブは上手く抜けている。昨年、ドラフト候補だった吉田凌(東海大相模-オリックス)の同時期より質が良いストレートを投げることができる。あとは昨年に投げていたフォークがある。これも落差があり、さらにストレートがボリュームアップすれば、評価ももっと上がって来ることは間違いない。高田は気迫溢れる投球で9回裏を抑えると、その後、延長戦へ突入した。
試合は12回まで決着がつかず、延長13回からタイブレークに突入。13回表、平塚学園は無得点に終わり、延長13回裏、桐蔭学園は、3番柿崎がインフィールドフライ。これを落球。しかし打者はアウトになるので、走者が飛び出せばタッチプレーになる。これで二塁走者がアウトになり、二死二塁。このまま延長14回に突入するかと思われたが、4番中がストレートを打ち返し右前適時打。見事にサヨナラを決めベスト8進出を決めた。桐蔭学園は粘りの野球を見せた。桐蔭学園からすれば、9回で決着を付けたかった試合だったが、それでも一歩踏みとどまり、勝利をおさめたのは次につながるだろう。
打者では柿崎颯馬(2年)が良い。バットでベースをポンポン叩いたり、屈伸したりと、独特のルーティンで打席に入る。桐蔭学園は伝統的に左打者が多いのだが、インパクトまで無駄のないスイング軌道をしながらも、それでもボールの下を捉えて打球を遠くへ飛ばす意識が見られ、さらに逆方向にも強い打球を打ち返すことができる。この辺りは、同校の先輩・茂木栄五郎(楽天)を意識しているのかもしれない。高田のストレートに振り遅れ気味だったのは反省点だが、そのストレートに振りまけないトップの形成、スイングスピードが身に着けば長打はもっと多くなるだろう。センターの守備はソツがなく、肩も高校生にしては標準以上のレベルにあったので、楽しみな選手だ。
サヨナラ打を放った中 清隆(3年)は、がっしりとした体格をしていて、なんといってもインパクト時に強い押し込みができる選手で、一つ一つの打球が鋭い。130キロ後半の速球を連発していた高田からただ1人だけ鋭い打球を飛ばしていたので、その目の良さは特筆すべきものがあるといえるだろう。そしてここぞという場面で決めた勝負強さは実に素晴らしかった。
平塚学園は敗れたとはいえ、間違いなく夏につながる試合だったといえる。なんといっても常に明るい雰囲気が良い。負けている時でも決して悲壮感がなかった。ああいう雰囲気は中学球児から良い影響を与えるのではないだろうか。現代っ子の気質にマッチングしたベンチワークで見習うべきものは多かった。
それにしても対戦するたびに激戦になるこのカード。夏も実現すれば、今回のような死闘を繰り広げてくれそうだ。
(写真・文=河嶋宗一)
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