沖縄尚学vs宜野湾

三塁打を放った沖縄尚学・多和田

　昨年の春を思い起こしていた。

　一昨年の秋の県大会で早々と敗退したが、長い冬を越してパワーアップし、昨年春の県大会で優勝。その勢いは止まらず、同夏の選手権沖縄大会を制し甲子園でもベスト8進出した興南の強さを、この春の沖縄尚学に見るのだ。

　初戦、沖縄石川との戦いを4対0で制した沖縄尚学は浦添、那覇商、宜野湾戦とこれで3試合連続コールド勝ちだ。それではその強さを見せつけた試合を振り返ってみよう。

　2回、沖縄尚学はヒットで出塁した砂川 リチャードを二塁へ進めて諸見里 俊の当たりは一塁へ。しかし、宜野湾がこれをトンネルしてしまう。さらにライトのカバーも遅れる間に諸見里は三塁を陥れた。ここで9番多和田 優亜が左中間を破るタイムリー三塁打を放ち2点を先制した。
4回の沖縄尚学は、このイニング先頭の高良諒が四球を得ると続く宮城良隆がレフト戦を襲う二塁打。一塁から高良が一気に還り1点を加えると、多和田にも2打席連続となるタイムリーが生まれた。ツーアウト後、3番大兼久 亮平が柔らかくレフト前に運ぶ間に二者が生還して大量4点を奪った。
さらに沖縄尚学は5回、高良が一塁戦へ絶妙なバントヒットを決めると宮城の当たりは右中間へ。ここでも俊足を活かした高良が本塁を奪うと諸見里にもヒットが生まれる。相手内野陣がシフトを取らないことを確認するように、多和田がスクイズを成功させると、トップの安里大心にもライト前へのタイムリーが出て合計9点をボードに刻んだ。

　それでも。

　「打ったのは下位打線。上位が不甲斐ない。」と、試合後の比嘉監督は手厳しかった。かと言って上位だけが打って勝ってもダメ。どこからでも繋がり、どこからでも点を奪える。その理想を掲げるくらいの力が今の沖縄尚学にはあるからこその、指揮官の叱咤でもあるのだ。

　投げては「とにかく先頭打者を出さないことを心掛けた。」と言うエース諸見里が、打者24人に対し僅か3安打のみに抑える好投。7奪三振無死球も立派だが、68球しか要さなかった投球術も際立っていた。

　「夏に勝つのが一番強いチーム」と比嘉監督。この春の強さも、沖縄尚学にとってはまだまだ中途の坂に過ぎない。辛酸を舐めさせられた昨秋の屈辱は、夏の頂点に立つまで払拭するわけにはいかないのだ。

(文=當山 雅通)