興南vs豊見城
大きく翔ばたくサウスポー。川満の11奪三振の快投で興南が4年振り9度目の決勝進出
11奪三振完投の興南・川満
島袋 洋奨、比屋根 雅也。脈々と受け継がれる興南奪三振サウスポーの仲間入りに名乗りを上げたのが川満 大翔(ひろと)だ。準々決勝の宜野座戦ではわずか4つだった三振の数が、この準決勝では二桁を越す11個と奪いまくった。
打者から見ると、ボールの出所が見えにくいと思われる身体の使い方と、しなるような長いリーチが特徴。やや上体が前に突っ込み気味に見えるが、下半身がそれを上手く受け止めているといった印象だ。疲労が蓄積しているだろう先輩比屋根にとってもチームにとっても、計算できるピッチャーが頭数に入ったのは来年に向けて心強い限りだろう。
試合は1回、興南・1番野村 幸矢が二塁打を放つと犠打で送り三塁へ。ここで3番上原 麗男がレフトへ犠牲フライを上げてまずは先制。2回には5番嘉数 尊(かかず・みこと)のレフト前安打を、犠打で再びスコアリングポジションに送ると、7番諸見 伸彦がセンター前へタイムリーヒットを放ち序盤で2点を奪った。豊見城も2回、ライト前ヒットで出塁した當山 全樹が、二盗三盗に成功する好走塁を見せるがマウンドの川満が3人を三振に斬るなど力で豊見城打線をねじ伏せていく。
3回から6回までヒット僅か1本の豊見城だったが7回、二死から6番赤嶺 優が死球を選ぶと続く宮城 壱成の当たりは外野方向へ。これを外野手がエラーにする間に、二塁走者が一気に生還し1点を返した。
だが、取られたら取り返せ!これが出来る興南はやはり強い。
その裏、2回に続き嘉数がライト前ヒットで出ると犠打で二塁へ。諸見もヒットで繋ぎ一・三塁として8番平良 昂也(たかや)がスクイズをきっちりと決めてリードを戻した。この日3度あった送りバントとスクイズを合わせ4本の犠打を失敗することが無かった興南。小さなことが出来ないのに大きなことは出来ないという言葉がある通り、選手個々の細かい点での成功率が名門の名門たるゆえんでもある。
7回に失点した川満だったが、8回は三者凡退、9回は四球の走者を出してしまったが、最後の打者を三振に斬るなど被安打4、132球の完投でチームを4年振りの決勝へと導いた。
敗れた豊見城だが、21年振りのベスト4の扉を開けたナインの力は興南に及ばなかったもののその差は決して大きくない。エース金城 良太郎の伸びは、興南川満と比べてもそん色なく、無四球が示す通り、内と外に出し入れできる投球術は一年生のそれを超えているといってもいいだろう。ヒットにはならなかったものの、力強い打球を見せた4番島袋 瑶平(ようへい)など好選手が揃っており、2年生と合わせた来春以降の戦いぶりが非常に楽しみなチームのひとつでもある。
興南と沖縄尚学が一年生中央大会で顔を合わせるのは意外と少なくこれで3度目。前回は東浜 巨が一年生の2006年。そのときは6対2で沖縄尚学が勝利を収めている。
今年2015年では春季県大会、選手権沖縄大会と興南が優勝。果たして今回の私学対決はどうなるか!?高校野球ではFreshmenである一年生同士の戦いではあるが、2校のユニフォームがグラウンドで対峙する以上、意地とプライドの火花が飛び散るのは間違いない。永遠のライバル対決、2015年第3Rのゴングは明日鳴らされる。
(文=當山 雅通)