尽誠学園vs三本松
尽誠学園、偉大な先輩に贈る「好走塁」
9回表・自軍の好走塁に沸き立つ尽誠学園ベンチ
「『お疲れ様』というメールは送って『また連絡させてもらいます』という返信がありました。あの年までよくやってくれたと思います」。
ベンチ外の選手たちが外野芝生の朝露をトンボで取り除き、スタンドでゴミを拾う[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]の午前7時。尽誠学園・松井 義輝監督はかつてコーチとして指導した谷 佳知外野手(オリックス・バファローズ)の今季限りでの現役引退について、こう話した。42歳までのNPB19年間で通算1927安打・133本塁打・741打点・167盗塁をマーク。173センチの小柄ながら「走・攻・守」全てのバランスに優れ、チームのために全力を尽くしたプレースタイルは、多くの同体格の選手にも前に進む勇気を与えてくれた。
そんな谷選手が「尽誠」のユニフォームを身にまとっていた若き日から約四半世紀後の後輩たちは、この三本松戦で素晴らしき姿を見せてくれた。最も象徴的だったのは2点リードで迎えた9回表である。
2番・土井 力丸(2年・遊撃手・右投左打・162センチ53キロ・府中市立第一中(広島)卒・2010年NPB12球団ジュニアトーナメント広島東洋カープジュニアチーム)の中前打と、4番・松井 永吉(2年・三塁手・右投左打・177センチ81キロ・ナガセボーイズ(大阪)出身)の右前安打により二死一・三塁のチャンスをつかんだ尽誠学園は、5番・渡邊 悠(2年・投手・180センチ83キロ・左投左打・三木町立三木中出身)の打席時に松井がディレイドスチールを敢行。ギリギリまで三本松の挟殺プレーを引き付け、土井の本塁突入をアシスト。自らも二塁へ進んだ。
さらに松井は渡邊の二塁ゴロが安打になる前に全力で三塁を回り、4点目を奪取。「一死二塁、二死二塁での走塁練習を試合前にはよくやってきたが、それがうまくいった」と松井監督をうならせ、敵将・日下 広太監督に「9回に綻びがでてしまったことが悔しい」と地団駄を踏ませたこの好走塁は、「今日は気持ちが入っていたし何も考えず打者を抑えることだけを考えて」自己最速137キロをマークしたストレート中心に押し、131球3安打3与四死球8奪三振完封をマークした渡邊と共に試合を決めるファクターとなった。
かくして2007年夏以来遠ざかる甲子園14年ぶりセンバツ出場へ向け、「好走塁」でつかんだ4年連続秋ベスト8。尽誠学園にとって、この勝利は単なる1勝以上に大きいものとなるはずだし、しなければいけない。そして、その結晶こそが「尽誠魂」を貫いた偉大なる先輩・谷選手に報いる最大の贈り物となるはずだ。
(文=寺下 友徳)
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