試合レポート

東京実vs芝浦工大高

2015.07.20

粘りの東京実、延長12回志熊がサヨナラ打

 前日、日大一との壮絶な打撃戦を制した芝浦工大高と、同じく前日、都立高島相手に、わずか3安打しか打てなくても競り勝った東京実という、タイプの違うチームの戦いは、白熱の投手戦となった。

 東京実の先発は前日170球近くを投げた2年生エース・横山 恒平ではなく、同じく2年生左腕の丹野 将也が先発した。

 1回表丹野は芝浦工大高の1番青山 裕大にレフト線を破る二塁打を打たれたが、身長164センチと小柄な丹野は、強気の投球で後続を断つ。2回表にも6番島田 文仁に二塁打を打たれるなど、ピンチが続くが、低めへの制球が良く、得点を与えない。

 芝浦工大高の先発はエースの島田。前日3回途中で降板し、6失点と不本意な投球であった。しかしこの日は、まるで別人のように腕がよく振れ、力のある球を投げる。またバックも三塁手の津川 壱成がフェンスに当たりながらもファールフライを好捕するなど、エースを支える。

 0対0の均衡は、意外な形で崩れる。5回表芝浦工大高はこの日好守が光る2番津川が左中間を破る二塁打で出塁すると、暴投と4番浅井 陸の四球で二死一、三塁。ここで東京実の先発・丹野は、一塁に牽制をしようとしたものの、動作を止めてボーク。津川が生還した。

 一方芝浦工大高は、6回裏に東京実が5番浜端 丈瑠の左前安打や2つの四球で二死満塁となったところで、好投の島田から、前日好投し、勝利を呼び込んだ2年生の國廣 翔大にスイッチ。國廣は1番串崎 圭人を左飛に打ち取り、ピンチを切り抜けた。

 東京実は前日好投とした左腕・横山が6回から登板。連投の疲れからか、前日のような球の勢いはなく、たびたびピンチを迎えるが、主将の串崎をはじめとして、バックが好守で盛り立て、追加点を許さない。


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 それでも9回裏東京実はあっさりと二死になり、敗色濃厚となる。ここで打席に立った1番串崎 圭人はハーフバウンドの二ゴロ。これを芝浦工大高の二塁手が一塁に暴投し、俊足の串崎が出塁。串崎は当然のように二盗を成功させる。2番小林 英明へは四球の後、3番の鈴木 柊馬が左前安打を放ち、東京実は土壇場で追いついた。

 11回表芝浦工大高は、2本の安打でチャンスを迎えるが、4番浅井の二遊間のゴロを串崎が軽快にさばき得点を与えない。

 12回裏東京実は、この回先頭の鈴木が右前安打で出塁すると、4番福嶋 大涯が手堅く送る。福島は身長172センチ97キロの巨漢であるが、攻守とも動きが器用で、バントも難なく決める。ここで芝浦工大高の外野陣は、極端なまでに前進守備をする。5番浜端は四球、6番時盛 倭人は中前安打で満塁とし、7番の志熊 秀隆が右前安打を放ち、東京実がサヨナラ勝ちした。

 東京実は前日の都立高島戦(試合レポート)に続き長打はなかった。それでも、足があることは、長打と同じ、もしくはそれ以上の意味があることを、串崎をはじめとする攻撃陣が示した。大物キラーとも呼ばれる東京実。機動力野球で東東京に旋風を巻き起こす可能性は十分にある。

 一方、前日打撃戦というよりも、乱打戦を制した芝浦工大高は、この日はうって変わっての投手戦を演じた。前日不本意な投球に終わったエースの島田が、好投したように、ちょっとしたことで変わることに、高校生の可能性を感じさせる。サヨナラ負けを喫した2年生投手の國廣も、負けたことは当然悔しいだろうが、カーブを軸に好投し、成長のきっかけをつかんだのではないか。
登録部員17人の芝浦工大高は、8人の3年生が抜けると部員は9人になる。次の1年生が入るまでは、厳しい状況が続くかもしれないが、伝統校らしい勇姿を、また期待したい。

(文=大島裕史


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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