試合レポート

都立国立vs東京電機大高

2014.07.13

ウィークポイントを巡る攻防

  34年前に都立勢初となる甲子園出場を記録している都立国立が、4度の逆転劇があった接戦を制して初戦を突破した。

 都立国立は1回表、四球で出たランナーを送って作った1アウト3塁のチャンスに、3番・主将の髙野啓斗選手(3年)がライト前へタイムリーを放ち先制。対する東京電機大高も1回裏、ムードメーカー役でもある1番・上條陸選手(3年)が初球をライト線へ二塁打し出塁。続く送りバントはサードでアウトとされチャンスを逸したかに思われたが、4番・澤井俊紀選手(2年)、5番・青木宏樹選手(3年)、6番・高森軒佑選手(3年)の3連打で2点を奪い鮮やかに逆転。初回からいきなりシーソーゲームの口火は切られた。

 この試合の焦点を語る上で、どうしても避けられない話題がひとつある。それは「キャッチャーの肩」。ランナーを出すとスチールされてしまう可能性が高い――東京電機大高が抱えるこのウィークポイントを巡る攻防が、両チームの争点になり、ひいては試合展開にも大きく影響した。

 この試合で都立国立が記録した盗塁は14。ランナーが出れば、二盗、三盗、ダブルスチール……徹底的に走った。盗塁による攻略に手ごたえを感じたのは3回だろう。2アウトから1番・石川朔太郎選手(3年)がヒットで出塁し二盗。続く大神光太郎選手(3年)のセカンドゴロがエラーになった間に生還した。さらに2アウト2塁から三盗とパスボールが重なり一挙にホームインし逆転に成功する。

 東京電機大高も打撃で応戦する。1点を追う4回裏、先頭の高森選手がヒットで出塁すると7番・小俣一樹選手(3年)がストレートの四球を選ぶ。そしてレフト線へ2点タイムリー三塁打が出てまたまた逆転。会心の逆転打を放ったのは8番・キャッチャーの佐藤暉選手(2年)だった。さらにスクイズで1点を加点し、2点のリードを奪う。


 中盤の攻防は見応えがあった。盗塁からチャンスメイクする都立国立は、毎回のようにランナーを出せる地力がある。対する東京電機大高はチーム一丸で守る。先発の山田雄一投手(3年)は大柄で重いストレートを武器とする一方、ランナーが出れば牽制、クイックなど細かな技術を駆使し盗塁阻止を狙う。守備陣も4回は2アウト2,3塁から難しいゴロをサードの澤井選手が上手く処理し、5回は1アウト3塁の場面で小俣選手がライトフライから本塁封殺。必死の守備で点を許さない。

 しかし、東京電機大高に乱れが生じてしまったのは7回だった。1アウト2塁からショートゴロの送球をファーストが採り損ね1アウト1、3塁に。盗塁と四球で満塁となった後、都立国立の3番髙野選手の犠牲フライでまず1点。盗塁で1アウト2、3塁とした後、4番小野淳也選手(3年)が同点タイムリーヒット。さらに四球が続き再び満塁となったところで6番・山﨑歓友選手(3年)がセンターへ逆転2点タイムリーヒット。ランナーを貯めることが最も怖かった東京電機大高にとって、痛いところでエラーと四球が出てしまった。

 再再度逆転した都立国立は、7回裏より先発の備前滉介投手(3年)から堀内俊太郎投手(3年)へ継投。備前投手は変化球を主体とするピッチャーだったのに対し、堀内投手は速球でぐいぐい押してくるピッチャー。打で反撃したい東京電機大高だったが、このギャップに順応するまでの攻撃回数が残り3回では足りなかった。タイプの異なるピッチャーを用意できたのも都立国立の地力だ。結局9回にもエラーと盗塁から1点を加えた都立国立が逃げ切った。はっきりした意図をそのとおり遂行できる都立国立の野球は見事だった。

 対して東京電機大高の集中力、互いをカバーしようとする姿勢には目をみはった。2011年以来となる夏の勝利は、きっとベンチにいた後輩たちが成し遂げてくれるはずだ。

(文=伊藤亮

【僕らの熱い夏2014 第70回】都立国立高等学校(西東京)
これまで課題として取り組んできたことをすべて出し切り、必ず甲子園で勝利という目標を達成します!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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