試合レポート

東陵vs古川工

2014.07.07

再び聖地へ 東陵が大逆転で初戦突破

 宮城大会は2日目を迎え、[stadium]蔵王球場[/stadium]では1回戦屈指の好カードがあった。東陵古川工東陵は今春のセンバツに出場しており、古川工は2011年夏の甲子園に出場している。しかも、東陵・千葉亮輔監督と古川工・間橋康生監督は仙台大の先輩後輩という間柄。古川工が甲子園に出場した時、千葉監督は間橋監督にノックバットを贈り、今春は間橋監督が千葉監督にノックバットを贈った。また選手間でも同じ中学、同じシニア出身という選手が両チームにいる。そんなチーム同士の対戦となった。

 古川工が先攻で試合は始まった。1回表、古川工の1番で左打者の鶴谷堅人(3年)が5球目を叩き、鮮やかにレフトへヒット。2番・鈴木皓大(3年)の打球を東陵のサード・白石雅嗣(2年)が弾く。ショート・工藤翔(3年)がカバーするが無死1、2塁。ここで東陵はタイムをとった。
3番・佐藤宏太郎(2年)が死球を選んで満塁とした古川工だったが、4番・西村薫(3年)はサードゴロとなり、5→2→3のホームゲッツー。この時、ファーストに送球した東陵伊東拓人捕手(3年)の送球はやや高くなり、東陵の落ち着きがないように見えた。場面は2死2、3塁。古川工の5番・遠藤快斗(2年)はセンター前ヒットを放ち、三塁走者がホームイン。東陵のセンター・山﨑誠悟(3年)が打球をグラブからこぼす間に二塁走者もホームに滑り込んだ。スコアボードに「2」が灯る。6番・吉村広樹(3年)はショートゴロに打ち取られ、古川工の攻撃は終わったが、浮き足立つ東陵の出端をくじいた。

 

その裏、東陵は1番・山﨑がセカンドフライに倒れる。2番・工藤が四球を選び出塁。3番・相沢一寿(3年)への6球目で盗塁を試みるも、三振ゲッツーでチェンジとなった。2回以降も走者をためてチャンスを作るも、古川工のエース・鈴木皓に打ち取られていく。

 5回表、古川工はこの回の先頭、7番・渡辺彰太(1年)がライト前ヒットで出塁。8番・鈴木大亮(3年)のファーストゴロで2塁フォースアウトとなるが、9番・高橋優人(2年)が犠打を決めると、1番・鶴谷がストレートの四球で2死1、2塁。追加点のチャンスで2番・鈴木皓の打球はセンターに抜けそうだったが、東陵のセカンド・柴田優祐(3年)が追いついて捕球。ところが、ボールを上手くつかめず、握り代えて一塁に送球したが、ワンバウンド。ファースト・伊藤匠哉(3年)も捕れず、その間に2人が生還した。その裏、東陵は三者凡退に倒れ、4—0と古川工リードで前半が終わった。


 東陵としては、5回裏を三者凡退で終わっていたのがラッキーだっただろう。というのも、5回裏は7番・柴田から始まり、9番の梅木雅也(2年)で終わった。6回裏は、1番の山﨑から始まるのだ。後半のスタートにはもってこいの打順であり、主将でキャプテンシーの強い山﨑から始まるのは東陵としては心強い。

 東陵は6回表を無失点で切り抜け、6回裏の攻撃を迎えた。古川工の先発・鈴木皓にも疲れが見え始めていたが、山﨑、工藤の1、2番が四球で出塁。3番・相沢がレフトへタイムリーを放って1点を返した。さらに、4番・白石が三塁線をきれいに抜くヒットで2人が返って1点差。さらに、無死2塁で5番・伊東の打球はセカンド後方、ライトの前にポトリ。無死1、2塁で6番・伊藤の打球はピッチャーとファーストの間に変則な打球となり、古川工のファースト・遠藤が一瞬、迷った。その間に東陵は同点に。さらに、7番・柴田が四球で無死満塁。そして8番・佐藤は死球を受けてついに勝ち越しに成功した。

 こうなると古川工の負の連鎖は止まらない。9番・梅木の三ゴロを、サード・渡辺が前にこぼし、一塁への送球はワンバウンド。これにファースト・遠藤が飛びつくも後ろに逸れ、東陵は2点を加えた。1番・山﨑は死球でまたもや無死満塁。さらに2番・工藤がセンター前に2点タイムリーを放つ。


 ここで、古川工は先発・鈴木をサードに、レフトの佐藤をピッチャーに、サードの渡辺に代わって関谷心(3年)をレフトにと選手交代をした。

 無死1、3塁で代わった佐藤は暴投で1点を与え、3番・相沢のレフト犠飛で計2点を許した。それでも、古川工は1死を得て落ち着きを取り戻したのか、4番・白石のライトへの打球をライト・吉村がダイビングキャッチ。その後、四球とヒットで走者を背負ったが、最後はセンターフライに打ち取った。

 長い長い東稜の攻撃。あっという間に、11対4と試合がひっくり返った。
直後の7回表、古川工は三者凡退に倒れ、ゲームセットのはずったが、7回コールドに気づかなかった東陵の一部の選手はベンチに戻ろうとした。それくらい、波乱な試合だった。

 前半は古川工東陵に牙を向いた形で、東陵に流れを渡さなかった。試合前にベンチから外野へキャッチボールに行く時、戻る時、シートノックでポジションに行く時、シートノックが終わってベンチに戻る時、そして、ゲーム中…。あらゆる場面で見せた全力疾走に、“全力疾走の神様”が微笑んでいるように見えた。

 とはいえ、勝負は無常である。ミスにも乗じて、一度、火がついた東陵の打線は止まらなかった。勝った東陵は2回戦で仙台三と対戦する。仙台三は昨年から残るバッテリーが話題のチームだ。再び聖地へと戻るために。負けられない戦いはまだ始まったばかりだ。

(文・高橋 昌江

【野球部訪問:第125回 東陵高等学校(宮城)】

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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