青森山田vs弘前学院聖愛
サヨナラのホームに触れる岡﨑(青森山田)
負けられない同県対決!勝負を懸けた決断!!
延長11回裏。2本のヒットと犠打で一死一、三塁とチャンスを作った青森山田に対し、守る聖愛はタイムを取った。
その間を利用して、三塁走者の岡﨑誠也(2年)と、打者の中村竜也(2年)が互いに歩み寄って意思を確認しあう。
「外野にさえ打ってくれたら、自分が還る自信があったので、頼むから打ってくれと中村に言いました」(岡﨑)
「岡﨑がフライだったら走ると言ってくれた」(中村)
タイムが解け、聖愛のマウンド・石沢航太(2年)が打席の中村に対する。
ファウルが2球続いた後の3球目。中村が放った打球はフェアグラウンドへ飛び、狙い通りの外野フライとなった。
少々浅めにも感じる飛球。だが三塁走者の岡﨑に迷いはなかった。勝負をかけたスタートを切ると、ライト・嘉瀬建(1年)からの返球が本塁へ届く寸前に、手を伸ばしてホームベースに触った。
「ヨッシャー」と大きな声を発した岡﨑の元へナインが駆けよってくる。ホッとしたように笑顔の中村も輪に加わった。逆にガックリと項垂れる聖愛の選手たち。3時間23分を擁した互いに負けられない戦いを青森山田が制した瞬間だった。
打った中村は、初戦(盛岡大附)でも勝負を決める一打を放っている。そしてこの試合でも1点ビハインドで代打起用された9回に、起死回生の同点タイムリー。
「短期決戦のトーナメントではラッキーボーイが必ずいる」と佐藤伸二監督が話す存在の中村に、11回の場面で打席が廻ってきたのが青森山田にとっては幸運だった。
福田将馬がバントを決める(青森山田)
そして佐藤監督が、「この試合のラッキーボーイ」と語ったのが岡﨑。
実は2点を追う9回に、先頭打者が死球で出た直後に廻ってきた打席で、キャッチャーへのファウルフライを打ち上げてしまった。しかし、これが落球となり命拾い。その後に三塁線を破る二塁打を放ち、チャンスを広げて、同点へと繋げた。
「あのファウルフライで、秋の最後の打席を無駄にしたと思った。(命拾いして)ここで打たなければと。ファウルフライの時には当てただけになってしまったので、三振しても良いから思い切って振ろうと気持ちを切り替えました」と話した岡﨑。
ここで出塁したことが、中村の一打で同点のホームを踏むことにつながる。
11回は佐藤監督も勝負をかけた。岡﨑がヒットで出塁した後、三番手で力投していた山地大成(2年)の打席で、バントの為の代打・福田将馬(2年)を起用。プレッシャーのかかる場面でしっかりと犠打を決めている。
ブルペンではもう一人の投手である金子晃哉(2年)が準備をしていたが、走者の岡﨑はこの代打起用を見て、「この回に決めるしかない」と思ったという。
このゲーム展開で、マウンドに上がる次の投手の精神状態を思えば、岡﨑の考えはナイン全員と共通だったことだろう。
ラッキーボーイと、勝負をかけた決断。それを味方となった青森山田が同県対決に勝利した。
一方の聖愛は9月の県大会準決勝に続いて青森山田に敗れた。ただし、完敗だった9月から比べて、今回は惜敗。勝負には敗れたが、収穫も大きかったゲームと言えるだろう。
1回に先制し、1点を追う5回には満塁から代打・森山裕土(2年)の走者一掃三塁打など一挙に5点を奪った。先発の1年生右腕・赤川諒は、140キロに迫る力強い直球を武器に、力投した。
しかし球数が150球を超え、青森山田打線の『投げさせて後半勝負』の作戦に、球威が落ちた終盤に力尽きた。7回まで無失策だった守備も、終盤に崩れた。
原田一範監督は、「エラーが絡んだことがまだまだ自分達に足りない部分だと感じました。部員の一人、一人の課題が明確になった試合だと思います。一冬みんなで頑張って、来年の夏に(青森大会で)優勝できるストーリーを描きたい」と決意を語った。
(文=編集部)