試合レポート

筑陽学園vs西南学院

2013.07.09

1対0の投手戦を制した豪腕

 試合は投手戦となる。両投手ともに、素晴らしい素材だった。勝ち投手となった筑陽学園のエース右腕笹渕 塁嗣(2年)は、来年のドラフト候補に挙がりそうな逸材としてぜひピックアップしたい投手である。

 笹渕は、188センチの長身。下半身の太さは中々のモノ。日ごろから厳しく自分を追い込んでトレーニングをしているのだろう。セットポジションから始動し、左足を高々と上げていきながら、体を沈み込ませていき、左足の膝を送り出して踏み出している。踏み出した足が開かずに抑えることができている。テークバックの動きを見ると、右ひじを折りたたむようにしてテークバックを大きく取っていき、豪快に振り下ろす。
 最初は、フォームのバランスが合っていなかったためか、豪快なフォームの割に速球の勢いが合わなかった。しかし、2回以降からフォームのバランスが合致してきたのか、140キロ前後のスピードと角度を兼ね備えたストレート、スライダー、縦に落ちるスライダー、フォークと角度ある速球、縦の変化をつけた投球で、6回二死まで無安打に抑える投球を見せる。

 一方で西南学院の先発・松井孝介(2年)も好投。182センチ69キロと上背があり、肩肘も柔らかく、下半身の柔軟性もあり、体を沈み込ませ、柔軟な体重移動から、肘がしっかりと上がり、打者よりで球を離せる球持ちのよいフォームが魅力。球速は130キロ前後だが、スライダー、カーブ、スクリューを織り交ぜ、こちらも筑陽学園打線を無失点に抑える好投を見せる。

 投球もまとまっており、まだ体が細身であることを考えれば、体力がつけば面白い左腕だ。また、その素質以上に、試合に取り組む姿勢が魅力的。彼はベンチにいるときは、誰よりもナインに率先して声援を送っている。松井は、6回で降板するのだが、ベンチにいるときは先頭となってナインを出迎え、ハイタッチを繰り返していた。

 これは投手・野手との信頼関係を築く上で、大事なことである。能力はあっても、チームメイトに対して冷たい投手よりも、松井のようにナインにしっかりと溶け込んで気遣いができる投手。どちらが信頼関係を築けるかといったら松井のような投手であることは間違いないだろう。なんとしてでも援護してやろうという気持ちになる投手だった。


 松井は6回で降板。7回裏から登板したのは、主将の内川 大雅(3年)だ。168センチと投手としてはあまり大きくないが、しっかりと腕が振れる投手で、125キロ~130キロ前後の直球、スライダーで押していく投手。筑陽学園は内川にくらいつき、二死から一塁に笹島をランナーに置いて1番稲葉 康平(3年)が左横線を抜ける二塁打で二死二、三塁のチャンスを作ると、2番福井 凌一(3年)の遊撃内野安打で1点を先制。わずかなタイミングだったが、福井が全力疾走で1点を呼び込んだ。

 1点をもらった笹渕は8、9回にスコアリングポジションにランナーを置きながらも三振に切り抜けゲームセット。笹渕は4安打11奪三で完封勝利。1対0の投手戦を制した。

 1点を守りきった笹渕の精神力の強さは素晴らしい。ピンチになるほど腕が振れて、勢いある直球と縦に鋭く落ちる変化球が決まり、しのぐことができる。188センチの長身。140キロ前後の速球、縦に落ちる速球、ピンチに強い。能力の高さとメンタルの強さが備わった長身右腕として今後も大きく注目を浴びる存在になることは間違いない。

(文:河嶋 宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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