仙台育英vs利府
仙台育英vs利府 試合シーンより
3時間6分の決勝戦
決勝は、仙台育英が16対9で利府を下し、3大会連続21度目の優勝を飾った。
3時間6分。この試合の所要時間である。
仙台育英の先攻で始まった。1番・熊谷敬宥(3年)が中安、2番・菊名裕貴(3年)が四球と無死一、二塁のチャンスを作ったが、3番・長谷川寛(3年)が三振し、熊谷は三塁で刺されて一気に2アウト。しかし、二死二塁で4番・上林誠知(3年)が中前にきっちり弾き返して先制した。
1回裏、利府は一死から2番・上野幹太(2年)が三塁側にバント。仙台育英の先発・馬場皐輔(3年)が捕球し、一塁に送球したが、ボールは逸れて一塁手・水間俊樹(3年)と上野が交錯した。しばらくして水間は「大丈夫でーす!」と両手で大きな丸を作ってベンチに合図したが、上野はベンチが下がって1番の万城目晃太(1年)が臨時代走となり試合が再開。3番・菊池将平(3年)が四球で一死一、二塁とした。4番・萱場祥一(3年)はセンター前にヒット。
二走・万城目がホームインし同点に追いつくと、仙台育英のセンター・上林が後逸する間に一走・菊池は三塁へ。打球を処理する間に萱場も二塁に進んだ。さらに5番・鈴木祐人(2年)が四球を選び、6番・沢田玄樹(3年)はスリーバント失敗に終わったが、7番・吉本健汰(3年)がレフト線にタイムリー。2人が生還し、逆転した。
2回表。仙台育英は一死から7番・水間が死球、8番・加藤尚也(3年)がレフト前ヒットで続き、一死一、二塁から9番・馬場がレフト前にタイムリーで1点差。さらに熊谷もレフトへ同点タイムリーを放ち、菊名もレフト前で続いた。長谷川が一ゴロに倒れる間に逆転し、二死二、三塁で打席は上林。2試合連続となる右越え3ランで4点差に広げた。
2回裏。利府はこの回先頭の9番・高橋潔(3年)がヒットで出塁し、犠打の後、四球、ヒットで一死満塁と好機を作った。打席には4番・萱場。初球を叩くと、打球はグングン伸びてライトスタンドへグランドスラム。同点とした。5番・鈴木にヒットを許した所で仙台育英は馬場から1年生の小林勇太に交代。一死一塁で、6番・沢田を三ゴロに打ち取り、ゲッツーかと思われたが、セカンド・菊名が一塁に悪送球。二死二塁から死球を与え、8番・葛巻孝太(2年)に逆転打を許した。
仙台育英vs利府 試合シーンより
2回を終えて、8対7で利府のリード。ヒットは両者とも8本。ここまでかかった時間は1時間4分。
乱打戦が続くのか、と思われた試合だったが、3回以降は得点が動かなかった。
仙台育英は2回途中から2番手・小林勇に変えていたが、利府は先発・高橋潔のまま。2回の守備を終えて、利府・小原仁史監督はバッテリーにこう言ったという。
「夏は決勝まで当たらない。いろんなことを試していいんだぞ。逃げてやっても収穫はない」
捕手の菊池は「外中心の配球でインコースの使い方がよくありませんでした。3回からはインコースと変化球も混ぜたのでタイミングを外せたと思います」と話した。
利府が1点リードしたまま試合は進んで行った。
そして、5回を終えた整備中、仙台育英・佐々木順一朗監督の“喝”が球場に響いた。そのやり取りはまるで青春物語。この“喝”はチームに響いた。
7回。一死から5番・小林遼(3年)が二塁打で出塁し、暴投で三塁に進むと、7番・佐藤聖也(2年)がセンター前に同点タイムリー。二死から加藤が二塁打で続き、二、三塁で代打の切り札・小野寺俊之介(3年)。三ゴロとなったが、サードのエラーの間に2人が還って逆転した。さらに8回には6本のヒットを集めて一挙5得点。9回には小林の犠飛で1点を加えた。
利府は仙台育英の2番手・小林勇の前に3〜6回まで無安打。7、8回と鈴木天斗(3年)に抑えられ、9回に2失策などが絡んだ1点を奪うのがやっとだった。
利府・小原監督は「7、8、9回に何であんなに取られないといけないの?ってね。宿題ができたので、帰って練習します」と厳しいながらも、昨秋は地区大会敗退だったため、「公式戦の経験が少ないチームなので、ワンランク上の大会で公式戦ができるのはチームにとってプラスです」と東北大会を見据えた。
仙台育英・佐々木監督は「上林が打つことでチームに安心感が生まれます。馬場が打たれたのも収穫。夏はあれで終わっちゃうので。この2つが収穫です」と話した。
仙台育英の選手たちは、つながる攻撃ができた試合に「久々に育英らしい試合ができた」とどこか満足そうに球場を後にした。
(文=高橋昌江)