帝京vs日大鶴ヶ丘
帝京・菊池君
延長10回帝京、スクイズ失敗後にソロアーチで決着
4月1日から始まった春季東京都大会も早や大詰めである。準決勝の勝者は関東大会進出ということになるのだが、帝京は2年連続、日大鶴ヶ丘は3年ぶりの進出を狙うことになった。その試合は、もつれにもつれて延長10回、最後は一発でケリがついた。
1点を追う帝京は9回、代打浅野君のヒットからチャンスを作ると、2番田中 将也君のライト前タイムリーで再度追いついた。そして、その裏を先頭打者にヒットを打たれつつも0に抑えて、試合は延長戦に突入した。
10回、帝京は先頭の5番北條洲君がレフト線へ二塁打を放つと、バントで一死三塁として、7番山﨑康誠君が打席に入る。山﨑君は初回に1点を奪ってさらに三連打で満塁としていた好機に三球三振していたということもあって、前田三夫監督は迷うことなくスクイズのサインを送る。ところが、外角低めのスライダーをバットに当てることができずに空振りとなり、三本間で挟まれた三塁走者は刺された。さすがに帝京の応援スタンドからも、「あ~~」のため息が漏れてきたところだった。
ところがその直後、山﨑康誠君の一振りは左中間のフェンスを越えて、後方の防球ネットに直撃するソロ本塁打となった。仕掛けて取り損なった1点が、いとも簡単に入ってしまったのだ。これが、結果的には決勝点となって、帝京が日大鶴ヶ丘を振り切る形になった。
試合後、さすがに前田監督も苦笑いだった。「ああいうこともあるんだねぇ。だけど、監督としてはやはり、あそこはスクイズを決めておいてくれなきゃ困るわけですよ。だから、あとで小言は言わなくちゃいけない」と、複雑な心境である。
それでも、秋季大会は初戦で日野に敗退してしまい、そこからの立て直しということでは、自分たちでやってきたことの成果は出てきているのではないかと評価をしていた。特に、今大会は組み合わせが厳しいゾーンに入っていたということもあって、「まあ、(関東大会進出を果たすことができて)十分じゃないのかなぁ。激戦のところだったから、その中から上に抜けられないんじゃないかと思っていましたからね。不満もあるけれども、結果としてはここまで来たことは十分ですよ」と、合格点を出していた。
帝京・清水君
それでも、投手に関しては2年生エースの清水昇君が3回で降板したのは、やはり予定外だったようだ。「行けるとこまで行けということだったんだけれども、ちょっと早すぎだよね。やっぱり、6回くらいまでは投げて貰わなくちゃ、エースなんだから…」と厳しい。しかし、外野からリリーフした菊地君がその後を打たれながらも何とか凌いだ。
菊地君は打っても3番打者として、7回には同点2ランを放っており、投打に活躍をしていた。結局、菊地君のこの踏ん張りが最終的に同点、逆転を導いたということにつながったのである。
敗れた日大鶴ヶ丘は、4回に8番廣瀬 諒君のセンターオーバー二塁打などで逆転。7回に追いつかれても、その裏に二塁打の伊地知 優君をバントで進め、4番中村 怜君の巧みなセーフティスクイズで迎え入れ、ふたたび突き放すという粘り強い戦いで、試合の流れそのものは日大鶴ヶ丘だった。それだけに、9回に追いつかれたのは、痛かった。やはり、先頭打者を出したのが結果的には効いてしまった。
それでも、萩生田博美監督は大橋優太君と本田君という二人の投手が競い合いながら、この大会を通してさらに成長していったことで、夏へ向けての展望は開けてきたということは感じているようだ。ただ、この試合に関してはどうしても勝ちたかったという気持ちはあった。というのも、新しいグラウンドが完成して、その落成もあって、「東京都大会優勝か準優勝、そして、関東大会出場というアピールするものが欲しかった」という気持ちもあった。それでも、この大会を通しては、「去年の秋にはベンチにも入っていなかった廣瀬や栗田といったところが出てきてくれて、試合で結果残して自信をつけていってくれたことが大きいですね」と、チーム全体の底上げは順調に進んでいるということが実感できたようである。
(文=手束仁)