今治西vs済美
6失点ながら完投した済美・山口和哉(2年)
「センバツ準優勝県」獲得による「正の循環」
[stadium]西条市ひうち球場[/stadium]のネット裏を取り囲む無数のTVカメラ、県内各地から駆け付けたスカウティング部隊。そしてベンチ上に陣取ったいわゆる「甲子園ギャル」・・・。愛媛県勢9年ぶりとなる甲子園決勝戦の舞台を踏んだ済美への注目度は1ヶ月前と比べ格段に上がっている。
とはいえ、この試合で済美が「センバツ準優勝」にふさわしい戦いが出来たかといえば、答えは否だ。センバツでの負傷により全治4週間。「今は色々なダッシュで下半身を鍛えている」安樂智大(2年)の出番は一塁ベースコーチと伝令役のみで終わった。
また、切り込み隊長の上田恭裕(3年)は肉離れで三塁ベースコーチがやっと。さらに光同寺慎(3年)も負傷でベンチ外。将棋で言えば3枚落ちで臨まざるを得なかった状況では「勝てるチャンスがあったので負けたのは悔しいけれど、彼らがいない中でよくやったと思う」(上甲正典監督)内容が精一杯だったと言えよう。
その一方で、今治西は世間の注目度をうまく利用した印象がある。「済美はセンバツで素晴らしい活躍をしてきたので、最初3イニングの勝負を話していた」と大野康哉監督のスタートダッシュ指示に、選手たちは見事に反応。序盤の5得点は「冬に打撃中心でやってきたことが全てではないが出始めている」(檜垣孝明主将)成果を満天下に見せ付けるものとなった。
ただし、済美もこのままでは終わらないはず。6失点も自責点は4。最速133キロをマークし公式戦9回初完投した山口和哉(2年)厳しい自己評価を下し自らを鼓舞した。
「やっぱり力がないです。ランナーを出してからのテンポが悪すぎます。もっとテンポをよくするように練習しないといけません」これも全国トップレベルを体感したからこその発言だ。
とかく安樂の存在がクローズアップされがちな愛媛県だが、こうして各所に正の循環がなされつつあることも見逃せない点。「センバツ準優勝県」から一段階上がるためのレール敷設は確かに始まっている。
(文=寺下友徳)