国府台vs浦安
三塁打して「よっしゃ」という表情の国府台・湯浅君
ここ一番、好機に頼れる好打者が期待に応えて国府台が接戦を制す
取って取られて、取られて取って…、そんな展開の試合。最後に、ここ一番の好機で長打の出た国府台が浦安を突き放して代表決定戦へ進出を決めた。
個々の技術という点では、浦安の方が1枚上だったのだが、スコアとしては最終的には国府台が上回った。こういうところに、改めて野球という競技の妙味を感じさせてくれた試合でもあった。そんな味わいもある点の取り合いだった。
「1+1+1=3」こうした、地道な足し算の繰り返しのような国府台に対して、個々の能力としては「2」や「3」の選手がいた浦安だったが、「2×1×1=2」で「1+1+1=3」に勝てない。そんな理屈ではないけれども、そんなことを思わせるような、国府台のひたむきさと粘り強さだった。
3年前のこの大会ではベスト4に進出の快進撃を果たして、これで一躍注目校となった浦安である。
そんなこともあって、そこに憧れて入学してきたことも確かであろう。部員も増加して2、3年生だけで51人に膨れ上がっている。大塚知久監督は、いみじくもそんなことを指摘していた。「数ばかり多くなってしまっても、チームになっていませんねぇ」と、反省しきりだった。
そして、「一次予選は勝てるだろうなんて、自惚れていた気持ちが出たんじゃないですか。相手は、ひたむきでいいチームでしたから、8回に満塁で1番の子に回ってきたところで、これはダメだなと思いましたが、案の定やられました」と、試合の流れも後手後手に行ってしまっていたことを指摘した。
国府台・高橋君
大塚監督の言うように、国府台は1番湯浅君がキーマンとなっていたが、同点で迎えた8回、二死満塁でここしかないというところで、左中間に走者一掃の二塁打を放った。これで勝負ありということになったのだが、湯浅君はこの日3安打でいずれも長打だった。
湯浅君の2打席目となった3回は、四球の土井君を一塁に置いて右中間へ三塁打。これが、反撃の切っ掛けとなっており、古川(こがわ)君のスクイズが安打になって同点。3番及川君も続いて、一、三塁とすると、ここで吉田晃監督はディレードスチールを仕掛ける。これが野手の乱れもあって三塁走者が生還して逆転となった。
5回にも湯浅君は右中間二塁打を放ち、追加点の切っ掛けを作っている。結局、三本の長打がいずれも得点に絡んでいるのだから素晴らしい。
国府台の高橋君は球威はないものの右サイドで、“スーッと”沈んでいくような球をメインに、自分で工夫しなが何とか抑えていく投球だった。投球そのものも丁寧だった。
そして、再度突き放した8回からは、代打山口優君が切っ掛けを作っていたのでその裏からはショートの古川君がリリーフ。先頭にこそ四球を与えたものの、慌てることなく2イニングを抑えた。
浦安は、先発した左腕丸石君は3回に四球からややリズムを崩したのが効いた。二番手の虎渡君も代わり端の6回、四球から1点を失った。8回も四球の走者をためて三人目の星野君に託したが、湯浅君に打たれた。
それでも、浦安としても代打や途中から出場している選手が、与えられた打席できちんと安打するなど、層の厚さを示したのはさすがだった。ことに、倉前君などは2打数2安打。7回には同点タイムリーを放ったのは立派だった。
こうした層の厚さがあって競い合っていくことで、夏までには「技術+α」が大きくなっていくのではないだろうか。
(文=手束仁)