都立高島vs都立武蔵
先発した齋藤武尊君(都立高島)
初戦の硬さは否めなかったが、高島シード校の意地を示す
昨秋の東京都都大会では東海大菅生、都立城東、桜美林と、ここ15年以内に甲子園出場実績のある学校を軒並み撃破してベスト8に進出した都立高島。21世紀枠代表候補の東京都推薦校にも選ばれた。その自信を持って、一冬越してどんなチームになっているのか、楽しみでもあった。
ところが、試合後の島修司監督は、「この試合に限って言えば、マイナス方向を見せることになってしまいました。安打も相手の方が多いですよね」と、何とか勝ったものの、その内容には大いに不満ありという表情だった。
都立高島のエース齋藤武尊君は、181㌢68㌔のしなやかな右腕で、最速は140キロ前後も記録するストレートと、切れ味のいいスライダーが武器なのだが、この日は公式戦初戦ということもあり、いくらか力みも見られた。それに、立ち上がりに先頭の山下君に中前打されたことも力みに拍車をかけることにもなった。球も幾らか上ずり気味になっていたし、内側を突いていく投球も2つの死球を含めて6四死球とやや制球力も欠いていた。
もう一つ、マウンドがフィットしなかったところもあるようだったが、そのあたりは投げながら自分で修正していってほしいというのは、島監督の思いでもあった。
それでも、8安打されつつも1失点で、8奪三振というのは、それなりに要所は抑えたということであろう。
都立高島は3回、2死一二塁から4番田村君が中越三塁打して2者を返し先制。ところが、その裏にやはり4番の足立君に三塁打されて1点差と追い上げられる。しかも、4、5回は3人ずつで終わるなど、流れはむしろ都立武蔵に傾いていた。
それが6回、振り逃げと四球で出た走者をバントで進めて、齋藤武君が中前打して2者が帰った。自らのバットで投球を楽にしたのだ。9回にも、代打鎌田君がタイムリー出してダメ押し点を挙げて、9回は3人でピシャリと抑えた都立高島。最後は、何とかシード校らしさを見せられたという形だった。
島監督も苦笑しながら、「やっぱり、初戦ということもあったとは思います。ただ、チャンスで奇跡的に長打が出たり、安打が出ましたけれど、それがなかったらどうなっていたことかと思います」と言いつつも、シード校としてまずは初戦突破で安堵していた。
都立武蔵バッテリー
一方、わずか11人の選手でシード校に善戦しながらも及ばなかった武蔵。細かいところでのミスも痛かった。池上茂監督は、「投手は持ち味を出すことができましたし、悪くなかったのですが、チャンスはあっても勝負所で打てませんでした。2月には学芸大の及川コーチ(東大出)が来てくれて、おっつける打ち方を教えて貰って、その成果も出ていたかとも思っていたのですがね…」と、残念がった。
それでも、チームとしては元気よく声を出して、ミスをしてもポジティブだった捕手の曽田君はじめ非常に明るい、いい雰囲気だった。
都立の中高一貫校となって3年目の都立武蔵。中学には野球部がないので、経験者がそのまま上がってくるのは、中学時代にクラブチームでやっていた生徒に頼るしかない。高校段階で外部から2クラス分の生徒が入学してくるというが、その中から野球経験者を見つけて勧誘していくのも、池上監督としては、大事な作業となる。何せ、2年生は二人しかいないのだが、新チームのことも考えると、是が非でも7人以上の新入部員は確保したいところである。
部をチームとして維持させていくことも、都立校の顧問としては大事な仕事なのである。初めて野球をするという生徒の入部も歓迎しているという。受け入れてくれる、上級生たちのムードも非所にいいと思って大丈夫だろう。
(文=手束仁)