都立日野vs都立永山
志岐君(日野)
「消化不良…」を感じつつも、日野完封勝利
ほとんど毎回のように満塁や二三塁という状況を作っていた日野。しかし、結果的にはタイムリー安打は5回に1死満塁で9番志岐君が放った中前打一本のみ。その他の得点は、8回の無死満塁での秋庭君の中犠飛と失策、押し出しによるもので、いわば貰った得点だった。
そんなこともあって、試合後は日野の嶋田雅之監督はスコア的には快勝にもかかわらず渋い表情だった。
「うーん。相当、消化不良ですね。今年のチームは、そんなに打てるチームではないのですが、初回の満塁でも4番が外野フライでもいいのに、内野に打ち上げちゃってるでしょう。『こんな打線じゃ、上まで勝ち上がれないぞ』ということは、試合中もベンチでずっと言い続けていました」と、打線には不満があったようだ。
というのも、それだけ自信をもってこの大会に入ってきているということもあるのだろう。昨夏はベスト8に進出して、敗れはしたものの優勝した日大三を苦しめているし、昨秋もベスト8進出で、2回戦では帝京を倒す大殊勲を果たしている。
近年では、都立校の中では最も安定して上位進出を果たしているだけではなく、甲子園出場実績のある私学の強豪校にも対等以上の戦いをしてきているのだ。それだけに、毎回のように訪れた好機で、得点しきれなかったことに対して、嶋田監督としては大いなる不満があったということであろう。
とはいえ、4安打完封した池田君に対しては、3番打者としてはともかくとして、投手としては評価をしていた。「出来そのものは普通だと思いますけれども、この冬で抜いたスライダーを覚えたので、スタミナという点では9回を投げても十分というくらいになりました。練習試合でも、大勝ちするチームではありませんから、そういう意味では今年のチームらしい内容だったと言えるのかもしれませんねぇ」。
池田君(日野)
近年勝ち上がっている日野というと、強力打線が印象的なだけに、むしろ見ている我々の方にも、タイムリー打の出ない日野に対して消化不良感があったのかもしれない。
夏を見据えて、この大会ではまずシード権を獲得することが第一目標ではあろうが、そういう意味では、どんな形であれ無失点の進出は、さすがと言っていいだろう。3月25日からは、新入生の入部希望者の練習参加も認められているのだが、都合45~6人くらいが参加しているという。41人いる2、3年生と合わせると、80人以上の大所帯となりそうである。
一方、スコア的には完敗という印象の永山だったが、序盤は大いにチャンスがあった。西悠介監督は、「先制していれば、また流れが変わったかも知れません」と、2回の1死一二塁、2死二三塁を逃したのと、3回に2死二塁から3番山下君が中前打して二塁走者吉岡君が本塁突入して刺された場面を悔やんだ。
「投手は予定通りの継投で、ちょっとコントロールが悪かったかもしれませんが、何とか粘っていたのですが、結局、守りのミスですね。記録に表れたエラーだけではなくて、ゲッツー取れるべきところで取れなかったりとか、そういうところからほころびが出てしまいました。このあたりを、また作り直していかなくてはいけません」と、無念さを表しながらも切り替えていた。
左の百瀬君は緩いカーブを丁寧に低めに投げて、それを引っかけさせていた。6回からリリーフした近藤君は自分のリズムを大切にしながら、コースを投げ分けていき、走者は出しても粘っていた。
グラウンドも比較的恵まれている永山である。早稲田実では斎藤佑樹の2年先輩にあたる西監督が赴任してきてから、徐々にチームも整備されてきている。今春の新入生も、中学時代にシニアなどでの硬式経験者も何人か含めて、25人前後の入部が見込まれているという。
西東京にまた一つ、都立の注目校が出てきているという感じである。
(文=手束仁)