履正社vs関西学院
悔しい1失点敗退・長谷投手(関西学院)
わずか1点
7回裏のたった1点でゲームが決まった。
その1点に泣いた関西学院ナインの目は真っ赤だった。
特に悔しさを背負っていたのが、エースの長谷篤(2年)である。7回裏、履正社の先頭・6番宮本丈(2年)に与えてしまったストレートの四球が、失点に繋がってしまったからだ。
「気合は入っていたのですが、力んでしまった」と話す長谷。一つの四球からゲームは動いた。
次の7番井上和弥(1年)はスリーバント失敗に仕留めるが、8番東野龍二(2年)が二死覚悟で送りバント。
好機を探っていた履正社サイドは、何とか得点圏に進めて糸口を掴みたかったのだ。
形は作った履正社だが、打順は9番でキャッチャーの吉塚洸平(2年)。岡田龍生監督は、「もし打てなくても、次のイニングは1番からでしたので、そこから攻撃できればという思いでした」と話す。本人も「打撃は苦手」と語るように、打撃面では大きな期待をされていなかった。
ところが野球は不思議だ。5回の第2打席でも長谷からヒットを放ち、この7回もレフトへ弾き返したのだから。吉塚に、野球の神様がにっこり微笑んだ。
そして「ワンチャンスしかなかった」と岡田監督が話すように、二塁走者の宮本が本塁へトライしてきた。返球が少し逸れたのと、「宮本のファインプレー」(岡田監督)という見事な走塁でセーフに。
貴重な、貴重な、貴重な1点が履正社に入った。
「(吉塚に打たれた球は)ちょっと高かった」と失投だったことを認める長谷。兵庫県大会46イニング連続無失点で近畿に乗り込み、このゲームも素晴らしいピッチングを見せていたが、53イニングぶりに失った1点に泣いた。
「長谷は良く投げましたが、やっぱりあのフォアボール(四球)ですね」と話す広岡正信監督。
ただ、敵将の岡田監督は、「色んなチームとやらせていただきましたが、(この秋)これまで対戦した投手の中では一番良かった。ビデオを見て外中心という印象でしたが、バンバン、インコースを突いてきていた。ウチの打者はみんな差し込まれていましたね」と長谷のピッチングを絶賛した。
わずか1点。この重さを痛切に味わった長谷篤と関西学院ナイン。冬を越え、『あの1点があったからこそ』と言えるような成長を期待したい。
(文=松倉雄太)