試合レポート

都立小山台vs早大学院

2012.10.06

都立小山台vs早大学院 | 高校野球ドットコム

先発した伊藤 優輔(都立小山台)

投手勝ち! 都立小山台が延長15回の激戦を制する!

10月6日から東京本大会が開幕。
神宮第二はこの夏ベスト8の都立小山台と好選手が揃う早大学院と1回戦で当たるのは勿体無い好カードだ。試合は白熱した試合展開となる。

先制したのは都立小山台。2回表、阿部 翼(2年)がストレートを打ってレフト前ヒット。6番山本 楠(2年)は犠打。打ち上げたが、早大学院の投手・岩松 俊樹(2年)が弾き、無死一、二塁のチャンス。7番田邉弘之(2年)は犠打で一死二、三塁。8番金子 玲太(2年)の犠牲フライで1点を先制する。

しかしその裏、早大学院は先頭の5番翟 毅夫(2年は四球で出塁。6番藤岡の犠打で、一死二塁となって7番伊藤 大智(2年)の一塁線を抜けるライト前ヒットとなり、翟がホームイン。同点に追いつく。

都立小山台の先発は伊藤 優輔
1年生なのだが、実にマウンド捌きが落ち着いた好投手。中学軟式クラブ・荒川ウェーブ時代から注目されていた。3年春の都大会で優勝を果たし、多くの学校から誘われたが、都立小山台を選んだ。

伊藤はどんなタイプであるかというと野村 祐輔(広島東洋カープ)と例えればいいだろう。
将来的には都立の野村と評されてもおかしくないセンス抜群の好投手だ。174センチ62キロと体格的にそれほど恵まれていないが、技術の高さ、センスの高さで勝負するところが共通している。

まずは投球フォームの完成度が高い。ワインドアップから始動し、左足をゆったりと上げていき、右足にしっかりと体重を乗せて、左足をゆったりと前に送り込んで着地し、テークバックを大きく取って、上から振り下ろす躍動感溢れるオーバーハンド。投げ終わった後のフィニッシュが実に様になっており、筋の良さを感じさせる。
ストレートは130キロ~135キロ前後は出ていそうで、右打者、左打者問わず内外角へしっかりと投げ分けることができている。

変化球の球種が多い。変化球は6球種あると教えてくれた。今日はスライダー、カーブ、シンカー、フォーク、チェンジアップを投げており、合計5球種。いずれもストライクを入れられる精度がある。ストレート、変化球ともにコーナーに出し入れ出来る制球力がある。投球の完成度は1年生離れしている。ちなみにシンカーは甲子園の中継で倉敷商西 隆聖のシンカーを見ていて投げたいと思い3,4日で覚えたという。彼の器用さを物語るエピソードだ。


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13回裏、スクイズ敢行も失敗に終わる(早大学院)

 2回までの1失点に抑えていた伊藤だったが、7回裏、一死から6番藤岡 知也(2年)のセンター前ヒット。犠打で送り、8番佐野 宗洋(1年)が右前適時打で1点を勝ち越して許してしまう。

だが都立小山台は8回表、4番久保田がレフト前ヒット。阿部は空振り三振の間に二塁へ進塁。6番山本は高めに入ったストレートを打って右中間を破る二塁打で同点に追いつく。しかし後続が続かず試合は延長戦となった。

延長戦になって押していたのは早大学院側だった。延長13回裏、3番高橋 渉(2年)のセカンド内野安打。4番丸山がストレートを打ってライトの頭を超える二塁打。無死2,3塁という絶体絶命のピンチ。5番翟はセカンドゴロで、一死一、三塁。6番藤岡は四球で、一死満塁に。7番伊藤 大智を迎えた。

バッテリーはスクイズが来ると読んでいた。その読みは当たり、7番伊藤はスクイズを仕掛けてきた。都立小山台バッテリーはウエスト。伊藤は飛び付くも、空振り。三塁走者の丸山がアウトとなり、二死二、三塁に。伊藤はストレートで投手フライに打ち取り、サヨナラのピンチを切り抜ける。

そして延長14回も両校無得点に終わり試合はいよいよ延長15回に突入。

「長いことを監督やってきましたけど、延長15回に入ったのは初めてでしたね」
都立小山台・福島監督が初めての体験の延長15回。表に勝ち越さなければ都立小山台の今日の勝利はない。

都立小山台は執念の攻撃を見せる。4番久保田 裕大(2年)がストレートを打ってレフト線へ二塁打。無死二塁のチャンス。5番阿部はキャッチャー前への犠打で、一死三塁。勝ち越しのチャンスを作る。

ここで投手交代。佐野に代わり新田大貴(1年)が登板する。6番山本はショートゴロ。久保田は迷いがなかった。猛然とホームへ突っ込み、ショートは本塁へ送球。タイミング的にはアウトだ。しかし本塁が逸れて、ボールはネット裏に。都立小山台は遂に勝ち越し点を入れる。エラーだが、この暴投は都立小山台の何としてでも点を取りたい執念が呼んだのだろう。

その裏、伊藤が0に抑え、ゲームセット。延長15回の熱戦を制し、2回戦進出した。


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15回を投げ切った伊藤(都立小山台)

 「今日は伊藤に尽きます。守り勝ちといいますが、今日は“投手勝ち”ですね。伊藤が良く投げました」
福島監督はエースの伊藤を称えた。

反省としては
「この試合は何でもない走塁ミス、判断ミスが多かった。まずは2回表、1点を先制して、二死二塁から9番佐藤がライト前を打って還ってこられなかった。あの走塁ミスが後まで響いてしまったと思います」
延長戦となってしまったのは走塁ミスの多さと分析。この試合ではなんとしてでも点を取りたい気持ちからか、焦った走塁が多かった。ミスは出てしまったが、次の試合でどう生かせばいいか。その晩回するチャンスを彼らはもらったのだ。

それにしてもエース伊藤の安定感、落ち着きは素晴らしいものがある。ただ実績があるだけではない。どうしてこんなに落ち着いて投げられ、落ち着いてスクイズを防ぐことが出来るのだろうか。

「伊藤は緊張しませんからね。だからいつも落ち着いて投げてくれると思います」
と笑顔で語ってくれたのが正捕手の金子。確かにマウンドの表情を見ると慌てる様子はない。1点取られたら終わりという状況の中でも、延長15回まで、大崩れすることなく投げ終えたという事実が、彼のメンタルの強さを物語っている。

スーパー1年生といえば、飛びぬけてボールが速い、打球を飛ばす、肩が強いなど、フィジカル的なモノが光るが、これほど技術の高さ、内面の強さを持った1年生投手と出会ったのは初めてだ。再来年の夏まで東京都の高校野球を盛り上げる好投手が登場したといっていい本大会デビューだった。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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