伊集院vs大島
4点目をあげる伊集院高校
勝敗を分けたもの・伊集院VS大島
スコアブックをつけながら試合を観ていると、試合を第三者の立場で客観的に眺めることができる。鹿児島大島と伊集院の対戦は、新チームの試合らしく、お互い攻守にミスが相次いだ展開だった。ふと、その数がどのくらいあるのか気になって、試合を観ながらチェックして数えてみた。
3回に伊集院が逆転したシーンは、お互いの「ミスミス合戦」だった。伊集院が、連打で無死一二塁としたのはビッグイニングになるチャンスだったが、プッシュバントを狙った当たりは一塁手正面の小フライ。大島は一息つけるかと思いきや、暴投で一死二三塁とピンチを広げてしまう。二死となって5番・東福康平(2年)の当たりは征凡なセンターフライだったが、中堅手が落下点を誤り二塁打となって挙げた点数だった。
試合を観ながら、試合の流れを左右しそうな攻守のミスを挙げてみると、伊集院は攻撃で5、守備で4、鹿児島大島は攻撃で5、守備で5のミスがあった。攻撃ならバントミス、走塁ミス、判断ミス、守備ならエラー、悪送球、暴投、捕逸などの試合の流れを悪くしたプレーを、私の主観で数えてみた。両者ともミスの数はほぼ同じである。
勝敗を分けたのは、そのミスをカバーして余りある「ファインプレー」の数だ。伊集院は、攻撃でも守備でも、その数で鹿児島大島を勝った。例えば5回裏に、エラーで1点差に詰め寄られたあと、1番・松田賢斗(2年)のセーフティーバントが再び悪送球を誘い、一死一三塁と一気に流れが鹿児島大島に傾きかけた。それを救ったのが二塁手・寺園悠太(2年)のナイスカバーだ。一塁にカバーリングに入って、三塁をオーバーランした走者の動きを見て、三塁に矢のような好送球を送り、刺している。
「自分たちも攻撃ではそういう走塁をするから、相手の動きは分かっていた」
寺園は言う。8月の南薩大会準決勝・鹿児島城西戦では、同じようなカバーリング後のホーム返球でミスをして失点につながった苦い経験があった。この1カ月間は「終盤の流れを変えてしまうようなミスをしないように、練習を積んできた」ことが生きた。寺園は攻撃でも、2回にエンドランを決め、7回には貴重な追加点につながるセーフティーバントを決めている。
攻撃なら、4回に二死一塁から放った1番・池田賢史(2年)の右中間三塁打や、8回に放った6番・新井優介(2年)のソロホームラン、守備なら6、7回とピンチを併殺でしのいだプレーや、粘り強く完投した背番号10の左腕・亀山健作の好投などが「ファインプレー」に数えられる。
その数は伊集院に10、鹿児島大島に3あった。得点が6―3だったことが納得できる数字だ。
(文=政 純一郎)