試合レポート

大阪桐蔭vs牧野

2012.07.20

六本の矢と全力プレーで見せたゲーム

次から次へと投手がマウンドに送られてくる。
延べ7人の投手を起用する継投策は思惑通りだったという。

「組み合わせが決まったときから、色々な投手を投げさせようと決めていました。打たれるのを、指をくわえて見ていてもしょうがないですから。速い投手から変則投手と、とにかくうちの投手陣すべてで勝負しました」と、牧野の磯岡裕監督は戦術を説明する。

確かに、牧野のマウンドには様々なタイプの投手が登った。様々なタイプの球で打者の目を翻ろうさせる作戦が、大阪桐蔭にどこまで通用するのか。

先発した背番号18の田村駿太は緩急を使った投球が持ち味だ。この日の朝、先発を言い渡された2年生は「先輩投手にしっかり繋げられるピッチングをしたい」と意を決してマウンドに立った。

だが、初球を大阪桐蔭の1番森友哉(2年)にあっさりとセンター前に運ばれる。
「やっぱりすごいバッターやな」と全国優勝の打者の力をまざまざと見せつけられたが、反対に開き直って投げることができた。
中軸の打者に連打を浴び3失点。2回にも長打を浴びたところで交代した。結果としては満足のいくマウンドとはならなかったが、「自分の力は発揮できたと思います」と前を向いた。

三番手投手としてバトンを受けた背番号10の垣内涼汰(2年)は、内角を強気に攻める投球が光った。
「4番の田端(良基=3年)選手は威圧感があって、打球もすごかったです。でも、同じ高校生だしビビッてもしょうがないので、強気に攻めようと思いました。大差はつきましたけれど、楽しかったです」と、試合後は表情をほころばせた。

ベンチ上からの応援席からは、好プレーが飛び出すたびに大歓声が起こった。
その声援に乗って、5回から守備につき初めて打席に立った鴨瀬敦(3年)がしぶとく打球をセンター前に落とした。その瞬間は、大声援が球場にこだました。


だが、後続が断たれ、万事休す。1点を返すことは出来なかったが、最後まで笑顔で全力を出し切った牧野ナインの表情は晴れやかだった。

無失策で、自分たちのプレーを100%発揮した牧野ナイン。
今の3年生が入学した時に転勤してきた磯岡監督。2年3ヵ月を一緒に過ごしてきた3年生に対し、最後のミーティングで言った。

「日本一のチームを相手にエラーをせず、全力で勝負できた。胸を張れ。勝って校歌を歌うことはできなかったが、卒業しても公式戦には絶対に応援に来い。必ず勝つから、2年生、1年生達と、校歌を一緒に歌おう」

結果は白と黒に分かれるのが勝負。
でも堂々とした戦いぶりは、必ず後輩たちが受け継いでくれるはずだ。

スターティングメンバー
大阪桐蔭
2森友哉
4大西友也
9水本弦 (主将)
3田端良基 
7安井洸貴
5笠松悠哉
8白水健太
6妻鹿聖
1澤田圭祐

牧野
8高林羽輝
6川口大貴
5小島達也
7金津昌宏 (主将)
9福家一雅
3西尾隆太
4伊良部健也
2高橋朋希
1田村駿汰

(文=沢井史)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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