大阪桐蔭vs大阪商大堺
優勝旗授与・水本弦主将(大阪桐蔭)
掴んだ二本目の旗、挑む三本目の大旗
春季大会の実質的なエース・澤田圭佑(3年)が、大阪商大堺打線に7安打を浴びながらも完封。大阪桐蔭が秋春連覇、そして選抜大会からの公式戦連勝を13と伸ばした。
背番号『1』の藤浪晋太郎(3年)を一度も登板させることなく、最後まで負けずに府予選を戦いきった。「藤浪を投げさせずに勝てたことは大きい」と優勝投手に澤田は誇らしげに話してくれた。
決勝の相手は昨秋に苦戦した大阪商大堺。打撃に自信を持っているチームだ。澤田は1回からヒットを浴びるが、崩れなかった。7本のヒットはいずれも散発。スコアブックを見ると、二塁まで走者が進まれたのも一度だけだった。
「走者を背負ってからは粘れた」と澤田。ゲームをしっかりと作るという持ち味をいかんなく発揮した。
一方で打線は苦しんだ。トータルでは4安打で4得点。
この日、大阪商大堺のマウンドは西谷浩一監督が予想していなかったというアンダースローの江頭亨(3年)が立った。
変則気味のフォームから繰り出される球に中々タイミングが合わない。1回は三者凡退、2回は1点を取ったものの、無安打で挙げたものだった。
3回に2番大西友也(3年)にヒットが出るものの、5回まではその1本のみ。
6回、内野安打で1点を追加した後、大阪商大堺がエースナンバーの林田達郎(2年)にスイッチ。その代わりっぱなを、5番笠松悠哉(2年)が叩いて2点タイムリー二塁打。これでようやく得点的にも試合の流れをグッと引き寄せた形だ。ただし、7回以降は林田が立ち直り1安打のみで終わった。
「打線はまだまだですね。どんな投手に対してもしっかり打てるようにならないと」と西谷監督は課題を話した。
澤田圭佑投手(大阪桐蔭)
とはいえ、打てない時にどうやって得点に結びつけるかという術を実証できたのは、全国優勝校らしいところ。無安打で1点を挙げた2回はまさにそれだった。
このイニングは先頭の4番辻田大樹(2年)が四球で出塁。続く笠松は0ボール2ストライクと追い込まれるが、3球目が背中に当たり死球となった。6番白水健太(3年)の内野ゴロが併殺崩れになって1死1、3塁と場面は進む。
打席には不調でこの日は7番に下がった主将の水本弦(3年)。大阪商大堺・江頭の2球目、完全に捕えた打球ではなかったが、しっかりとセンターに打ち上げ、犠牲フライとなった。
打撃に納得はしていなかったが水本だが、「最低限(の仕事)はできた」とチームの先取点に貢献できたことを喜んだ。
6回の2点目も、1番森友哉(2年)が四球で出て、盗塁を決めた後、2番大西がファースト強襲でライトへ抜けるタイムリーになったもの。
わずかな糸口を逃さず得点に繋げる。守る側の立場になれば、点を取られるダメージは大きいし、打ち込まれていないだけにその大きさに気づきにくい。
8回と9回は無安打で締めた澤田。
「夏もできれば藤浪を使わずに勝ちたいけど、さすがにそうはいかないですよね」と報道陣に囲まれる背番号1を見やりながら微笑んだ。
保護者に優勝の報告をする大阪桐蔭ナイン
夏の全国制覇を目指すという観点からいけば、大阪大会で藤浪の疲労を少しでも減らすことがチームにとって大きなプラスとなる。
でもその前に、190校近い大阪を勝ち抜くのはもっと厳しい。それはあの悔しさ[参照2011年8月1日]を体験した彼らには、身にしみている。
「(全試合)1回から9回まで全力で戦いぬける体力と精神力」と夏に三本目の大阪の旗(優勝旗)を手にするために必要な要素を話した水本主将。
大阪の旗は昨年と同様に二本(秋と春)、大阪桐蔭に渡った。三本目を今年こそ手にするために、公式戦で勉強しなければいけないことはまだまだある。
「近畿大会では藤浪も投げる予定です」と話した西谷監督。ミーティングではその近畿大会での登録メンバーを発表し、入れ替わる選手も告げた。
新たに入る選手はここで『夏に必要な選手だ』とアピールをし、漏れてしまった選手は、『夏こそはもう一度ベンチに入る』と闘志を燃やす。
選抜優勝校でも、夏に入ればスタートラインは同じで他校との特別扱いはない。
保護者にこの日の優勝の報告をするナインに、笑顔はなく、視線は次に向いていた。
スターティングメンバー
【大商大堺】
6今泉孝樹、5佐竹惇壱、4知念勇弥、3辻本日和、7浅香智則、9堤裕基、2植林拓也、1江頭亨、8平井大介
【大阪桐蔭】
2森友哉、4大西友也、7安井洸貴、3辻田大樹、5笠松悠哉、8白水健太、9水本弦、6妻鹿聖、 1澤田圭佑