試合レポート

汎愛vs此花学院

2012.04.30

汎愛vs此花学院 | 高校野球ドットコム

福田 真也(此花学院)

まだ100パーセントではない福田 真也

大阪大会2回戦。汎愛此花学院。注目は最速153キロを誇ると言われる本格派右腕・福田 真也。2週間前の常翔啓光学園戦で公式戦デビュー。今日も展開次第で登板させるということで、公式戦デビュー前から多大な注目を浴びてきた福田 真也が本物の逸材なのか確認するべく、近大生駒グラウンドへ足を運んだ。両校は昨秋に対戦経験があり、此花学院が3-2で勝利している。秋以来の再戦に汎愛は燃えていた。

まず1回の裏、汎愛は押し出しで1点を先制し、6番小林の走者一掃の二塁打で3点を追加、さらにバッテリーミスで1点を追加し、5対0。更に2回の裏にも一死2,3塁と得点圏にランナーを送り、追加点のチャンス。ここで此花学院の先発・川合は降板。2番手に左腕の小坂が入る。小坂は小気味良い腕の振りからマックス131キロのストレート、スライダーを投げ分け、ピンチを切り抜ける。追う此花学院は9番澤端の適時打、3番川端の適時二塁打で3点を返し、5対3と2点差に迫る。

だが汎愛は5回の裏に1点、6回の裏にも2点を入れ、8対3と突き放す。6回の裏を終わってから、ベンチで待機していた福田がキャッチボールを始める。7回の表に1点を返し、8対4。

7回の裏から注目の福田が登板。4点ビハインドで登板である。
ちょっとした異変を感じた。彼がエースで万全の調子ならば、もう少し早い段階で投入しているはずだ。理由は2つある。まず福田の前に投げていた川合、小坂の両左腕がどこまで投げられるか。夏では福田一人ではなく、この3人を軸にして戦っていくと話した山本監督は2人を投げさせていた。福田に頼りすぎないためだろう。もう一つの理由は福田自体、調子が悪かったということだ。最近は気温の寒暖差が激しく、調整自体は思うように行っていなかった。練習試合でも6イニングが最長と話してくれたとおり、長いイニングを投げた経験がなかった。


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木元(汎愛)

そのためストレートが走っていない。右上手から投げ込む直球は135キロ~140キロ。最速142キロ。ストレートが殆ど抜けてしまっており、球速表示ほどの勢いは感じない。実戦で使える速球ではなかった。本人はフォームが安定していなかったと振り返る通り、重心が乱れ、左肩の開きが早く、リリースポイントが定まらない。バランスを崩したフォームが見受けられた。

7回の裏は無失点で切り抜けたが、8回の裏に古川に本塁打を浴びてしまった。

2回1奪三振1四死球1失点。
これが今日の福田の投手成績である。
ストレートで空振りが奪えず、変化球もスライダー、カーブを投げていたが、ストレートが走らないので、簡単に見切られており、本来の実力を出し切ることなく終えた。

試合は汎愛の先発・木元が此花学院の追い上げをかわし、9対5で逃げ切って3回戦進出を果たした。

汎愛は昨秋に3対0で負けている。
今回は打線が爆発し、此花学院の投手陣から9得点。此花学院の投手陣は決して弱くはなく、福田以外の川合、小坂も130キロ前後の直球、キレのある変化球を投げ分ける好左腕で、大量点を取られるような投手には見えなかったが、多くの打者が高めに入るコースを見逃さず、次々と得点を重ねていった。福田に対しても150キロという看板にやられることなく、臆せずに振り抜いた結果が石川のホームランにつながったと言える。そして木元も打たれながらも、勝負の度に吠える気合が入ったマウンド捌きで此花学院を抑え込んだ。この勝利は大きな自信になっただろう。


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福田 真也(此花学院)

 負けたとはいえ、此花学院は潜在能力が高い選手が多い。
まだミスが多いので。ミスを少しずつ潰していき、完成度が高い野球が実現出来れば楽しみなチームに映った。福田以外に登板した2人の左腕投手。上背は無いが、体の力が強く、適時打2本放った川端、長身捕手・森、同じく一塁・外野を兼任する長身・鍋島と磨かれれば楽しみな野手はいる。

とはいえ、上位進出を確かなモノとするには福田の復活が不可欠。バランスを崩していたが、肘を支点としたフォームはしなやかさがあり、不調でも140キロを出す潜在能力は素晴らしい。夏へ向けての課題としてフォーム固め・コントロールと上げてくれた福田。また勝ち進めば、4回戦で大阪桐蔭と対戦する予定があった。藤浪と投げ合いたいという気持ちを持っていた福田は2回戦で姿を消すことに悔しさをあらわしていた。

最後の質問として、福田に公式戦デビューする前から150キロを投げる右腕として紹介されている。それについてどう思っているか聞いてみた。

本人は「いろいろと期待をかけられて、しんどいと思う時があります」正直な気持ちを話してくれた。
マスコミに注目される球児が誰もが思う気持ちであると思う。もちろんうれしいと思う球児もいるかもしれないが、重圧になる時がある。ましてや公式戦で1球も投げていない高校生をこれほど扱うのは前例にない。その議論はさておき、夏までの課題としては足元を見つめ直すことが大切。

福田が春季大会で投げたのはたったの2回3分の1。大量リード、ビハインドといずれも重要な場面では投げていないのだ。修羅場を潜り抜けた経験がないまま夏を迎えることになったのは不安だ。その不安をかき消すには自分のフォームで投げて、自分のピッチングをして、結果を残す。それしかない。少しずつ自信を取り戻して、ようやく周囲が期待するパフォーマンスに応えられる時がやってくるのではないだろうか。

剛腕が輝く時は最後の夏まで持ち越しとなったが、気力・技術・体力の三要素が充実し、剛腕・福田真也 復活を期待したい。

(文=編集部:河嶋宗一)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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