専大松戸vs東京学館
栗原 洸(専大松戸)
新生・専大松戸も強さを見せつけて7回コールド勝ち
専大松戸にとって今年は勝負をかけていた1年だったかもしれない。1年春からマウンドに登っていた上沢直之が最終学年を迎え、下級生から経験を積んできた選手も多く、優勝候補と目されながらも4回戦に敗退した。勝負をかけたこの世代が抜けて、戦力低下が心配された新チームだが、一次予選を順当に勝ち抜き2回戦から登場した。相手は東京学館。実力を測るには絶好の相手といえる。
上沢直之の後を受け継いだのは栗原 洸。1年春夏に公式戦のマウンドを踏むものの、その後は三塁手・外野手として公式戦に出場していたが、新チームから投手に専念。エースとしてチームを牽引する。栗原。上沢のようなスケールはない。だがフォームの完成度、投球の完成度では決して劣っていない投手だ。
右オーバーから投じるストレートは常時130キロ~136キロを計測。指先にしっかりと力が伝わったストレートには筋の良さを感じる。彼の投球フォームは上沢と似て非なる。
上沢は踏み出す左足の膝をぐいっと伸ばして、テークバックを大きく取って、高い位置から振り下す本格派。187センチの長身を活かし角度のある直球で相手を圧倒させる。
栗原は体を沈み込ませていき、左腕のグラブを突き上げて、テークバックを大きく取って上から振り下す。沈み込みが深い分、上沢よりも角度はないのが最大の違い。ただ左肩の開きをしっかりと抑えられ、テークバックは内旋で、体の近くで振り抜くことが出来ているのは素晴らしい素質である。
変化球はスライダー、カーブ、カットボール。いずれもキレがあり、カウントで取れる制球力がある。ストレート以外で勝負できる変化球があり、投球を組み立てられることが出来るのは大きい。何よりも安定感があり、上沢よりも安定感を感じる。
上沢は一つバランスを狂うと制球が乱れやすいフォームをしており、球数が多くなる。栗原は無理に角度を付けずに内旋で体の近くで腕を振ることが出来ているので、制球のブレがない。栗原を初めて見た時から上沢より安定している投手であると思っていたが、あの安定感は失われていないようだ。クイックも1.2秒~1.3秒前後。牽制もしっかりと入れて、警戒意識も悪くない。上沢のような幹の太さはないが、伸びしろという点ではかなり大きいモノを感じさせた。
今年の千葉県は素材ならば相内誠(千葉国際)をNO.1と評価していたが、栗原も素材という点では引けを取らない逸材であると確認した。
斎藤(専大松戸)
野手陣も粒ぞろい。1年春からショートであった永浜秀紀は走攻守ともにレベルアップ。ひ弱さが見られた打撃も肉体面の強化によりしっかりとしたスイングが出来るようになり、打球に力強さが増した。1年秋からコンバートされたショートの守備もだいぶ様になってきている。足も速くなり、塁間タイムは4.36秒を計測した。1年春に記録した4.8秒よりもだいぶ速くなってきている。運動能力の成長によってプレーの幅が出てきた選手である。
その他にも正捕手の斎藤一樹。打撃技術では昨年の正捕手・大山を上回るモノを持っており、この試合でも右中間へ鋭い当たりを打った。グリップが下がり、高めの速球に弱い傾向があった大山。斎藤は大きな癖はなく、バランスよく構えることが出来ており、対応力の高さが伺えた。スローイングタイムも2.00秒前後。大山は1.9秒台を計測することもあったが、スローイングのコントロールは悪くない。攻守に優れた捕手で、体格の割りに足の速さも光ったので、今後も注目しておきたい捕手だった。
結果としては9対0のコールド勝ち。栗原は被安打3奪三振8無四球の完投勝利だった。
新チームの選手たちも打撃のポテンシャルが高い選手が多く、旧チームとの力量差は小さい。違いは経験だけだ。上沢直之が抜けて新チームはどうなるの?と心配するファンも多いと思うが、この世代の専大松戸も去年の先輩に負けない実力はあると断言しておきたい。
いつか先輩を超えるチームになっていくのではないか。そんな期待を持ってこのチームを見ていきたいと思う。
(文=編集部:河嶋宗一)