試合レポート

太成学院大高vs守口東

2011.07.11

太成学院大高vs守口東 | 高校野球ドットコム

今村信貴(太成学院大)

太成学院大・今村信貴の挑戦

“たかが初戦、されど初戦”とは良く言ったものである。

甲子園で勝つことを目指すのであれば、地区予選・初戦の戦いなどさほど重要視されるものではない。
長丁場の戦いにおいて、初戦のプライオリティ―重くはない。

しかし、一方で、初戦の戦いをいかに上手く入るかに、チーム、または個人の持つ、ポテンシャルの高さを推し量れるのも、また事実である。

常々、思うのである。
その年の注目選手の「初戦」こそ、もっとも重要なのではないか、と。

06年夏の大阪大会、府立の星として注目された城東工の山田弘喜(元ヤクルト)は初戦となった福泉戦で、参考記録ながら完全試合を達成した。

09年夏には、春からウナギ昇りに評価を挙げて、注目を浴びた関大一西田哲朗(楽天)が、その夏、初スイングで本塁打を叩きこむと、そのままサイクル安打を達成した。

 当時の山田は「(初戦の大記録達成に)意外とフツーでした」といつもと変わらぬ戦えたと主張し、西田は「スカウトがたくさんこられるのを知っていたので、自分の力を見せつけよと思った」と話したものだ。相手が格下だったという風が吹いていたとはいえ、大会前から新星として注目されても、初戦から変わらぬポテンシャルを発揮できたことは、彼らの強さを示す一つのポイントだったといえる。

 PL学園大阪桐蔭などの強豪校のように、常日頃からプレッシャーを浴び続けているチームとは事情が違う。
いつもは平凡な日常を過ごしている彼らが、一時的に脚光を浴びる。その中で迎える夏というものが、どれほど、「いつもと違う」空気が漂うか、想像できるというものだ。


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今村信貴(太成学院大)

2011年の夏、大阪、その位置にいるのが太成学院大・今村信貴である。
大阪、いや関西NO1左腕との呼び声のある今村は、昨秋の新チーム結成以降、注目されてきた逸材だ。左腕から投げおろす、内・外のストレートと低めに決まるスライダーなど数種の変化球は、プロのスカウトたちからの評価を受けてきた。

その今村が初戦を迎えたのだ。
山田や西田と同じような華やかな初戦を飾るのか。
今村の初戦は非常に興味深いものがあった。

結果は5回0安打10奪三振完封勝利。

四球を一つ出したとはいえ、参考記録ながらのノーヒット・ノーラン達成である。今村もまた、先人たちに続いたのである。

結果だけではなく、ピッチング内容もまた見事だった。
ストレートを多めに使った序盤は「チームに流れを持って来たかったので、自慢のストレートで押していきたかった」と強気に攻めた。

アウトコースのストレートを出し入れしながらカウントを稼ぎ、高めの勢いのあるボールで三振を奪う。格の違いを見せるピッチングとは、まさにこのことである。


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今村信貴(太成学院大)

中辻監督も舌を巻く。
「初戦ということで、硬くなるかなというのも思いましたが、予想以上の出来でしたね。体調も、ストレートや変化球のキレも、コントロールも良かったんじゃないでしょうか」。

注目されながら、初戦からベストピッチを見せる。
これは彼の持つ一つの能力と言えるだろう。

 今村自身の言葉が、なんともたくましい。
「注目されるようになっているなというのは感じています。今日も、スカウトの方が来られているのは分かっていましたが、そういうのは気にしないようにしています。ただ、夏の大会っていうと、いろんな人が応援してくれて、お客さんも多い。僕はその方が気合が入ります」

初戦を最高の形で飾った今村信貴
この勝利がすべてを満たすというわけではないが、今後の彼の戦いが一層、楽しみになったのが確かである。
今村も気合を入れ、今後へ意気込む。

「昨年の秋は履正社に負けて、この春は大阪桐蔭に負けて、悔しかった。、この2チームにリベンジしたいと思っています」

関西随一の注目左腕は2つの壁を越えられるか。
太成学院大・今村信貴の挑戦が始まった。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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