清教学園vs泉尾工
清教学園 伊東拓(1回表、初球をセンターオーバーに運び、一気に三塁もまわる)
開幕戦 先頭打者初球ランニングホームラン!
大阪大会の開幕戦で先頭打者初球ランニング本塁打。
つめかけた多くの観衆と、開会式を終えたばかりの185チームの選手たち。一体この光景を想像した方は、どれだけいただろうか。それほど衝撃的なシーンで夏の大会は始まった。
年に1日しか使わない京セラドーム大阪の独特な雰囲気。その中で、先攻・清教学園の1番伊東拓(3年)は、サイレンが鳴るなかの初球を思い切って振り抜いた。
打球はやや前進守備を敷いていた泉尾工のセンター・佐伯貴弘(3年)の頭上をはるかに超えていった。ベースランニング14秒8、チームで一番の俊足という伊東はすぐにトップスピードになった。一塁を蹴り、二塁も回った。外野手はようやく打球に追いついたばかり。伊東の足に自信を持っていた三塁ランナーコーチ・大領克章(3年)は腕をグルグルと回す。伊東は「少しビックリした」と話したが、迷うことなく本塁を目指し見事に生還した。
伊東自身野球人生で初となる本塁打は、自慢の足で掴み取った。ベンチで喜びを表すチームメート。独特な緊張感が、いつもの雰囲気に戻った瞬間だった。
試合後、インタビュースペースに姿を見せた伊東。開会式前のウオーミングアップで首脳陣から1番を告げられ、心に決めたという。
「ストライクが来る初球からいく!」。
投手が最初にマウンドに上がる後攻チーム。どんな投手でもその試合の第1球はストライクを取りたいものだ。
先攻チームの1番打者がこれを利用しない手はない。伊東の決断は、投手心理を読み取った賜物と言えるだろう。
しかし、インタビューでは意外なことも話してくれた。
「手ごたえはなかった。打ち上げてしまったと思っていました」。
伊東自身は、低いライナーでヒットを打ちたかったようだ。それが自分の特徴だということもわきまえている。うまくいってもすぐに反省した姿は、伊東の長所なのだろうとインタビューから感じ取れた瞬間だった。
今回はうまく決まった。でも次の試合からは、狭い住之江球場に変わる。つまりこんなランニング本塁打はなかなか出ない。
だからこのランニング本塁打はひとまず忘れて、次の試合では先頭打者で低いライナーでのヒットを目指してもらいたい。