試合レポート

橿原学院vs奈良朱雀

2011.04.10

194センチの大型右腕の行く末とは??

「15点くらい」。
 完投した日下部悠太を評した、橿原学院・竹村和泰監督のコメントである。

194㌢の長身から投げおろすストレートが武器の日下部はプロも注目するドラフト候補と騒がれている。この日の試合では、メジャーのスカウトが訪れたほどだ。上背の割にはストレートが130㌔しか出ないという物足りなさはあるが、それを差し引いても、190㌢超えの身長は魅力的である。

昨夏、秋とも背番号は「10」。エースナンバーを付けられないもどかしさを感じたが、今大会は「1」を付けて臨んでいる。初戦の相手は昨秋3位の奈良朱雀とあって、先発した日下部には大いに注目したものである。

結果だけを言うと、7回を投げて被安打3四球6失点2とまずまずの成績を残した。だが、冒頭の竹村監督の言葉にあるよう、良いところの見えなかった公式戦初先発と言って間違いはない。

日下部が良くなかったのはその投球フォームだ。上体を少しひねり気味に投球動作を始めると、三塁側に体重を傾けたまま、足を踏み出す。下半身が強くないから、当然、インステップになり、そのまま投球に入るのだ。身長が194センチあっても、球速が出ないのはその為である。

身長がある分、追い込んでからの高めのストレートは威力を発揮するが、竹村監督の言葉を借りれば「意図的ではなく、たまたまいった球」というものだ。変化球も抜け球が多く、制球が定まらない。角度の良さだけで抑えていたのが、この日の日下部の印象だった。


 今日のピッチングでは評価する人はほとんどいないだろう。たとえ、多少の成長があったとしても、この夏にどれくらいにしあがっているかは未知数である。194㌢の身長が生かされるピッチングができるようになるのは、遠い話なのではないだろうか。

 竹村監督は言う。
「彼に関して言うと、高校生での完成は難しいと思います。だから、無理に当てはめた指導は良くないのかな、と。急いだ指導はしないようにしています。本人が高校で結果を出したいと思っているところもあるので、ゆっくり過ぎてもいけないでしょうが、彼本来の良さが出てくるのは20歳を過ぎた頃ではないでしょうか」。

彼の成長で難しいのは身長が高いあまりに、上下のバランスがうまく取れないとことだ。竹村監督も認めている。
「トレーニングをすれば、すぐにどこかを痛めるというのがこれまでの繰り返しでした。この冬も、足首を痛めて、下半身の強化をできていなかったんです。3月20日に復帰して、当初は良かったんですけど、だんだん悪くなっていきました。もっと下半身を鍛えればと思いますが、上体だけで投げても、抑えられてしまうところもあるので、成長という部分では難しい面もあるのかなと思います」。

竹村監督は「20歳を過ぎてまで待ってじっくり育ててくれるところが良い」と、彼の将来の進路について思い悩んでいるようだ。
「急がない」竹村監督の指導は間違ってはいないだろうが、長期的な視野で選手を育成するシステムが日本にはないだけに、若い指揮官の苦悩は察することができるというものだ。
この類まれな身体を持った才能がどう生かされるのか。
急がずに、彼の成長をじっくり見守っていきたい。

(文=氏原英明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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