東郷vs瀬戸
喜ぶ東郷
瀬戸の先発・久保田は尻上がりに調子を上げていき、ストレートに縦割れのカーブ、スライダーを投げ分けて5回まで1失点に抑える。エースの久保田が調子を上げて、流れは瀬戸に傾きつつあったが、6回の裏に試合が動く。先頭の2番白子が四球で出塁。ここまで2安打の吉田はきっちりとバントを決めてワンアウト二塁。4番松本はセンターフライで白子は三塁へ進塁。二死三塁。5番松原がストレートをフルスイング。打球はセンター方向へ伸びていき、センターの頭を超え同点タイムリー! 6番多賀がショートのエラーで出塁し、ツーアウト1,3塁として7番河野が左中間を破るツーベースで一気に二者生還し逆転!4対2とする。その後はエースの多田が粘り強い投球。7,8,9回を0点に抑え瀬戸を下し2回戦に進出した。
吉田(東郷)
東郷高校は部員がわずかに13人と小所帯だ。
体格はひ弱。スイングも弱い。
対する瀬戸の選手はそれほどでもないのに、東郷と比べたら逞しく見えるほどだ。
そして単に二番手投手を投げているのに層を厚く感じた。
しかし東郷の選手は動きが実にきびきびしていた。
内野手、外野手の動きをみるときっちりと動けており、カバーリングも怠らない。
基礎をしっかりと教え込まれているのがうかがえた。
ある部員にその事を伺うと「基礎練習中心に行います」と答える。選手の数が少ないので、練習の密度が濃くなる。
だから私は「人数が少ないから密度が濃くなって、練習がきついでしょ?」と聞くと「はいきついです」と笑って答えてくれた。
この試合でも基礎練習の成果が出たワンプレーがあった。
勝ち越した直後の7回の表である。
瀬戸は代打・岡田がレフトフェンス直撃を強い当たりを放つ。当たりは強く、シングルベースにとどまる当たりであったが、岡田は一塁を蹴って二塁を狙った。レフト・前田は中継に入った吉田へ送球。そして吉田がセカンド・白子へ送球。
中継ラインが乱れぬ素晴らしい連係プレーでアウトにした。
これがビッグプレーだった。
もし二塁打になっていたら試合の結果は変わっていたと断言できる。
これでややばて気味だった多田は息を吹き返し、後続をぴしゃりと抑えることができた。
あの中継プレーは高度なレベルを求められる環境ならば当たり前のプレーだが、高校生でむしろ出来ない方が多い。
その中で光っていたのはショートの吉田。
吉田はレフトからセカンドまでの距離間をつかみ、一直線につながる位置に立つ。
そしてレフトの送球が衰えないところからカットし、そして吉田もセカンドへコントロールよく送球することができていた。
あの連係プレーはショート吉田だからこそ成し得たプレーだ。
そして吉田は打撃面でも引っ張る。
初回は右中間を破るスリーベース。
二打席目もライト前ヒット。
第三打席は同点に追いつくチャンスで初球にきっちりとバントを決めるセンスの良さを見せた。
構え方が様になっており、自分のポイントで打ち返すことができていた。
まだ体格面のひ弱さが目に付くが、体力が付くことによってプレーの幅が広がる選手のように感じた。
部員13人の力を集結して勝ち取った勝利。この勝利を自信とし、更なる飛躍を期待したい。
(文=編集部:河嶋宗一)