試合レポート

報徳学園vs塔南

2010.10.24

報徳学園vs塔南 | 高校野球ドットコム

佐渡友怜王(報徳学園)

1年生エース・最初のターニングポイント?

 エース・田村伊知郎(1年)が自らのバットで2安打4打点と活躍。終わってみれば10点差で6回コールドゲームで報徳学園が制した。
ただ、中盤まではどちらに軍配が上がるかはまったくわからないムードだった。その源は1回の攻防。

1回表、2死から3番向原翔(2年)が二塁打を放つと、4番駒月仁人(2年)がレフト前へ先制タイムリー。
その裏、報徳学園は3番永岡駿治(1年)の二塁打で同点に追いつくと、6番田村がレフトへ勝ち越しとなるタイムリー。

「昨日の練習で指をケガして心配だった」(奥本保昭監督)という搭南先発・粟津達也(2年)は報徳打線に飲み込まれた。
一気に畳みかけたい報徳学園は続く7番佐渡友怜王(1年)もレフト前へヒットを放ち3点目。
ところが一塁ベースを回ってオーバーランしてしまった佐渡友が、返球でタッチアウトになってしまう。
報徳に傾いていた流れは、ここで途切れた。

この走塁ミスさえなければ、報徳学園はもっと優位に試合を進められただけに、結果的には佐渡友にとって痛恨のミスが、この試合をおもしろくしている。

 2回に1点差とし、5回に追いついた搭南。しかしその裏、満塁で田村が走者一掃の二塁打を放って6対3。これをきっかけに、粟津は報徳学園打線に対して耐えきれなくなり、試合は決した。

 「ケガをするのも彼(粟津)の実力ということ」と奥本監督は話したが、表情は悔しさで一杯。2回に続いて3回、4回と先頭打者が出塁しながら、得点できなかったことも響いた。


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先制のタイムリーを放った4番駒月仁人(塔南)

 一方、夏春連続の甲子園を目指す報徳学園にとっては、心配な材料がこの試合で少しだけ見えた。
それは6回、8安打3失点と打たれたエース田村のこと。
今日の相手、搭南は田村のスライダー対策として右打者はベース寄りを意識して打席に立っていた。
1回は2死走者なしから連打で失点。2回も点を取られたのは2死から。
そして5回には4番の駒月に右方向へ完璧に捕えられた一発を浴びた。

 「今日の田村はまったく良くなかった」と振り返った永田裕治監督。
田村自身は「県大会の疲れは感じていない」と話している。
しかし、夏の甲子園と比べると、やはり球威が少しずつ落ちてきているように思える。

 振り返ってみれば、春の県大会でデビューしてから、近畿大会、夏の県大会、甲子園、秋の県大会とほとんど休みなし。
先輩エースの大西一成(3年)がいて、がむしゃらに投げていた夏は勢いのある球がどんどん良くなっていた。
それが甲子園ベスト4まで投げ切れた要因。

 先輩が抜けたこの秋、大黒柱として田村がマウンドに立っている。
県大会を一人で投げ切ったことからも、指揮官とチームの、エースに対する信頼は揺るぎないものが感じられる。
夏ベスト4の経験は普通の1年生ではほとんど得られない大きな武器だ。


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エース・田村伊知郎(報徳学園)

ただ県大会を終えた今、少しずつ蓄積されてきた疲労が出てきているように思えてならない。
それにこれだけブレークした分、田村という投手が全国に知れ渡った。
近畿大会で対戦するチームはもちろん、田村に対する対策を考えてくる。

 田村の基本スタイルであり長所は直球とスライダー。
逆に攻める側からすればこの2点を考えればいいわけで、この日のように少しでも直球の威力が落ちると、得点を奪うことはできる。

田村とすれば、前半で打たれた時にどう対処するか。この日は6回で試合が終わったために、終盤の3イニングがなかったことは幸いだろう。6回で97球を投げさせられている。

もし終盤3イニングがあったならば、どうなっていたかと想像してみると・・・
高校生の投手として、はじめてのターニングポイントにさしかかっているように見えたこの日のピッチングだった。

(文=松倉 雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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